ゆーたんです♪
素材セクターETFであるVAW(Vanguard Materials ETF、バンガード ・米国素材セクターETF)について、分析します♪
VAW ってどんなETF?
アメリカ株式市場のうち、素材セクターの銘柄を組み入れたETFです。提供しているのは、米Vanguard(バンガード)社になります。
素材セクターというと、中々イメージしにくい面もありますが、ざっくばらんにいってしまえば、製品をつくるうえで必要となる「素材」を製造している企業を集めたセクターです。
その種類は、化学品、産業ガス、包装紙、金属・ガラス、鉄鋼、貴金属、農薬・肥料など多岐にわたっています。どちらかといえば、ふだん消費者が購入する商品を製造するというよりも、その商品の「原材料」を製造する会社というイメージになります。
素材セクターは、ジェレミー・シーゲル著『株式投資の未来』によれば、1957~2003年のトータルリターンは8.18%となっており、S&P 500の10.85%を大きく下回り、全セクター中で最低となっています。そのためか、米国株投資家の中でも素材セクターは人気がありません💦
(Featured image by:Shutterstock)
VAWの基本情報
銘柄数 | 116 |
ファンド総資産額 | 20億ドル(約2,180億円) |
実績PER | 20.4倍 |
配当金(分配金)(直近12か月実績) | 2.598ドル |
配当利回り(直近12か月実績) | 1.95% |
経費率 | 0.10% |
生活必需品セクターほどではありませんが、銘柄数は少なめです。配当利回りも、S&P 500よりは高いものの、2%を下回っており、素材セクター全体として高配当というわけではありません。
VAWの構成上位銘柄
1 | Linde plc.(リンデ) | 産業ガス | 12.4% |
2 | Air Products & Chemicals Inc.(エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ) | 産業ガス | 5.8% |
3 | Sherwin-Williams Co.(シャーウィン・ウィリアムズ) | 建築資材 | 5.4% |
4 | Ecolab Inc.(エコラボ) | 化学品 | 5.4% |
5 | DuPont de Nemours Inc.(デュポン) | 特殊化学品 | 5.4% |
6 | Dow Inc.(ダウ) | 基礎化学品 | 4.4% |
7 | Newmont Goldcorp Corp.(ニューモント・ゴールドコープ) | 金 | 3.5% |
8 | PPG Industries Inc.(PPGインダストリーズ) | 化学品 | 3.4% |
9 | LyondellBasell Industries NV(ライオンデルバセル・インダストリーズ) | 化学品 | 2.8% |
10 | Ball Corp.(ボール) | 金属・ガラス容器 | 2.3% |
あまり私たち消費者にはなじみのない銘柄が並んでいます。商品に必要な「原材料」を製造する素材セクターの特徴ゆえと思います。
組み入れ割合1位のリンデは、産業ガス(製造現場などで使われるガス)大手の企業です。2018年にドイツのリンデと、アメリカのプラスクエアが経営統合して誕生しました。
組み入れ割合5位のデュポン、組み入れ割合6位のダウ・インク、表にはありませんが、組み入れ割合11位のコルテバは、以前はダウ・デュポンという一つの会社でした。2019年に入り、まず4月にダウ・インクがスピンオフ(分離)され、6月に特殊化学品事業を扱うデュポンと農業事業を扱うコルテバに分社化されました。
なお、組み入れ割合6位のダウ・インクは、素材セクター唯一のダウ平均採用銘柄であり、5%を超える高配当が魅力です。また、組み入れ割合7位のニューモンド・ゴールドコープは、世界有数の産金会社です。俗にいう「金鉱株」にあたります。
VAWのサブグループ比率
1 | 特殊化学品 | 30.4% |
2 | 産業ガス | 18.3% |
3 | 基礎化学品 | 9.2% |
3 | 包装紙 | 9.2% |
5 | 肥料・農薬 | 6.0% |
6 | 金属・ガラス容器 | 5.6% |
6 | 鉄鋼 | 5.6% |
8 | 建築資材 | 4.8% |
9 | 金 | 4.6% |
10 | 総合化学 | 2.0% |
VAWの配当金(分配金)推移
2014年までは年1回の配当で、2016年から四半期ごとになりました。素材セクターは、景気変動によって、需要が大きく変わり、業績も大きく変動する景気敏感セクターであることから、リーマンショック時は約42%の減配となっていますが、基本的には右肩上がりの傾向を示していますね。
2019年の配当金は2.5975ドルと、前年比で+15.7%の増配を達成しています。年平均増配率(2005~19)は+7.3%です。
VAWの株価チャート(2004/1~)
VAW VS S&P 500
VAWが設定されたのは2004年1月26日で、設定来のリターンは+170.78%となっています。同期間のS&P 500は+184.79%ですから、それよりもわずかに下回っています。
2018年まではS&P 500を概ね上回っていましたが、18年以降はその差が縮まり、19年はほぼ連動した推移となっています。米国株は全体として堅調ですが、素材セクターに関しては、景気後退への懸念から伸び悩んでいるという状況でしょうか。2018年1月につけた高値144ドルをいまだに上回ることができていません。
VAW VS S&P 500(トータルリターン)
※税金や取引手数料は考慮しない(出典:Vanguard HPより作成)
設定来のトータルリターンで見ると、VAWはおおむねS&P 500を上回ってきましたが、2019年に入って逆転し、やや差をつけられていることがわかります。2008、18年の落ち込み具合が大きく、景気変動の影響を強く受けていることもわかります。設定来のトータルリターンは年率8.2%です。
まとめ
S&P 500と比較すると、素材セクターの値動きは比較的大きくなっていることがわかります。今後、米国経済が景気後退期に入れば、商品の「原材料」を製造する素材セクターも、需要の落ち込みに直面することが予想され、業績の悪化、株価の下落をもたらす懸念があります。
一方、リーマン・ショック以降、2018年に至るまで、S&P 500のパフォーマンスを上回っていることからもわかるように、景気回復期には力強い上昇を遂げていくことも予想されるセクターです。個別株を購入する場合も、セクターETFを購入する場合も、景気後退期(もしくは景気後退が意識されるタイミング)で株価が大きく値下がりしたときを見計らって、購入したいですね✨