ゆーたんです。ナショナル・グリッドの銘柄分析です。安定した業績と高配当が魅力の銘柄です♪
ナショナル・グリッドってどんな会社?
ナショナル・グリッド(National Grid、ティッカー:NGG)は、イギリスのロンドンに本社を置き、電力・ガス事業を展開する公益企業です。
主な事業は、イギリス国内での送電・配電事業およびアメリカのマサチューセッツ州、ニューヨーク州での規制事業(電気・天然ガス)です。2022年の収益は196億ポンドドルとなっています。
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設立は1990年と比較的新しい企業です。それもそのはず、かつてイギリスの電力事業は国有化されていました。しかし、国有ゆえの非効率性や高止まりした電気料金が問題となったことを受け、1990年に3社の発電会社、1社の送電会社に分割され、民営化されることとなりました。
このとき誕生した送電会社がナショナル・グリッドです。つまり、ナショナル・グリッドは、発電事業を担っていませんが、イギリスの送電事業を事実上独占していることになり、きわめて公的性格の強い企業ということになります。
2000年代に入ると、ナショナル・グリッドは、アメリカの電力会社を買収するなどして、事業を積極的に拡大してきました。その結果、今日ではアメリカでの収益が6割弱を占めるまでになっています。
ナショナル・グリッドの基本情報
セクター | 公益(マルチユーティリティ) |
株価 | 67.99 |
PER(2023年予想EPSベース) | 15.7 |
EPS成長率(2018〜22) | 8.1% |
配当(2022年実績) | $3.2502 |
配当利回り | 4.71% |
増配率(2018〜22) | 2.6% |
増配年数 | 11年 |
S&P格付け | BBB |
ナショナル・グリッドの業績
収益、営業利益、純利益

この10年間の収益(売上高)はほぼ横ばいでしたが、2022年の収益は大きく増加しています。
収益が増加したのは、2021年にイギリス最大の配電会社WPDを買収したことによる部分が大きいでしょうか。他方で、イギリスのガス輸送・計量事業の60%を投資ファンドに売却するなどしており、電力インフラのアセット(資産)が70%という状況で、電力インフラに軸足を移しつつあります。
欧州企業らしく、脱炭素化は相当意識しているようで、2022〜26年で35億ポンドの支出を計画しています。ガス輸送・計量事業の売却もその一環といえそうです。
ナショナル・グリッドの部門別収益・営業利益(2022年)
部門別収益の内訳

部門別営業利益の内訳

収益ベースでは、ニューヨーク・ニューイングランド、すなわちアメリカの規制事業(電力・ガス)で過半数となっていますが、営業利益ベースですと、イギリスの送電・配電事業で過半数を占めています。
イギリス電力システム運用(オペレーション)は、電力システムの管理を行っており、収益に占める割合は大きいものの、事業継続のコストが大きく、利益はほとんど生み出していません。こちらも規制事業です。
ベンチャー事業は、規制事業以外のものであり、国際連系線(国家間を繋ぐ送電線)プロジェクト、LNGサービス、再生可能エネルギーなどで構成されています。
EPS、ROE

EPSは一時的な要因も多いため、ガチャガチャしています。2017年の純利益が急増していますが、これはイギリス国内のガス供給事業の61%を売却したことが影響しています。
Underlying EPSは増加傾向にありますが、事業の組み替えなどで、数字が次年度だと変わっていたりしますので、参考程度にしていただければと思います。ナショナル・グリッド社は今後5年間で5〜7%程度のEPS成長を目指すとしています。
キャッシュフロー(CF)

電気送電網やガス輸送網などの整備・維持管理に、多額の設備投資がかかっていることから、フリーCFは少なくなっています。営業CFマージン(営業CF/収益)は30%台で安定しています。
ナショナル・グリッドの配当

ポンドドルベースで見ると、2012年以降連続増配となっています。
イギリス株ゆえ、源泉徴収税が0%なのも嬉しいですよね(ただし、1株あたり$0.03のADR管理手数料が年間配当から引かれます)。
2011年は数値上減配となっていますが、これは新株予約権を発行したことで、株式が希薄化されたことによるものです。
配当性向はやや不安定ですね。Underlying EPSベースで見ると、一応70〜90%の枠には収まっています。

増配率は2013年以降、年率1〜4%程度で推移しています。当面はこの水準での増配が続きそうです。
ナショナル・グリッドの株価・トータルリターン(1999/10~)
株価推移

NGGは2007年12月に一時92ドル台の最高値を付けました。リーマン・ショックで半値以下となってからは、40~80ドルのレンジで推移していることが分かります。
2015〜20年にかけて野党の労働党党首を務めたコービン氏がナショナル・グリッドをはじめとする公益企業の再国有化を主張したこともあって、株価はやや下落傾向でしたが、同氏は2020年4月に退任、国有化リスクが後退したことで株価は再び上げていますね。
このグラフだけを見ると、全く株価が成長していないように見えますが、現地ロンドン市場に上場しているほうの株価で見ると、また違った景色が見えてきます。

長期的には、きれいな波動を描いて上昇していますね。
この2つのチャートを比較すると、為替レートの影響がいかに大きいかがわかります。
NGGが高値を付けた2007年は1ポンド=2ドルを超えていました。2023年3月現在は、およそ1ポンド=1.23ドルです。つまり、この10年あまりでポンドの価値が、対ドルで約6割になってしまっています。
ポンドの価値が今後対ドルでさらに弱くなってしまわないか心配な面はありますが、ナショナルグリッドはアメリカでも事業を手がけており、収益の過半がドルベースです。なので、過度な心配は不要かと思います。
トータルリターン

1999年以降のトータルリターンではS&P 500を上回っていますね。2015年頃までの貯金によるところが大きいとはいえども立派だと思います。
まとめ
- イギリスの送電事業を独占し、配電事業も最大手を買収。ビジネスモデルは安定、倒産の可能性はほとんどない
- 脱炭素化に向けて、事業ポートフォリオを組み替えており、電力事業に軸足を移しつつある
- ポンドドルベースでは2012年以降連続増配。イギリス株ゆえ、源泉徴収税0%なのも魅力。新NISAにも?
- 規制産業ゆえのリスクが存在。例えば、国有化されるリスクや、許容利益が圧縮されるリスクは残る
私はナショナル・グリッドを保有しています。2018年以来、現在に至るまで保有し続けており、保有株の中でも最古参の株の一つです。
規制産業ゆえのリスクは存在しますが、ビジネスモデルは安定しており、投資家には配当でしっかりと報いてくれます。脱炭素化に向けてポートフォリオを組み替えている点も好印象です。また、源泉徴収税もゼロなので、2024年からの新NISAでの投資対象としても悪くないかもしれませんね✨
情報開示:この記事は私自身が書いたものであり、私の意見を表しています。私はこの記事から報酬を受け取っておらず、この記事で言及されている会社と直接のビジネス関係はありません。