ゆーたんです♪
本日は、金融セクターETFであるVFH(Vanguard Financials ETF、バンガード・米国金融セクターETF)について、分析します♪
VFH ってどんなETF?
アメリカ株式市場のうち、金融セクターの銘柄を組み入れたETFです。提供しているのは、米Vanguard(バンガード)社になります。
(Featured image by:Shutterstock)
金融とは、文字通り、お金に余裕がある人からお金が足りない人に資金を融通することです。
企業が生産活動を行うには、工場の建設や機械の購入など、多額の費用がかかります。最初からそれだけの費用を用意することは現実的ではありません。金融があることで、企業は初めから多額の費用を用意せずとも生産活動が行えるようになります。
金融は、私たちにとっても身近な存在です。例えば、私たちも家や車を買うときにローンを組むことがありますが、金融がなかったら、手持ちのお金だけで大きな買い物をしなければなりません。
このように、生産や消費といった私たちの経済活動に金融は欠かせない役割を果たしていることから、「経済の潤滑油」なんて呼ばれたりもします。
なお、ジェレミー・シーゲル著『株式投資の未来』によれば、1957~2003年の金融セクターのトータルリターンは10.58%となっており、S&P 500の10.85%をわずかに下回り、全セクター中で6番目となっています。
VFHの基本情報
銘柄数 | 431 |
ファンド総資産額 | 78億ドル(約8,500億円) |
実績PER | 14.0倍 |
配当金(分配金)(直近12か月実績) | 1.6574ドル |
配当利回り(直近12か月実績) | 2.18% |
経費率 | 0.10% |
銘柄数は全セクターのなかでも最多です。実績PERはエネルギーセクターよりも低くなっていて、全セクター中で最低です。
配当利回りは2%台前半と、S&P 500よりは上回っていますが、飛びぬけて高いわけではありません。これには、無配を貫くバークシャー・ハサウェイが一定程度組み込まれていることも大きいかと思います。
VFH の構成上位銘柄
1 | JPMorgan Chase & Co.(JPモルガン・チェース)【都市銀行】 | 10.1% |
2 | Bank of America Corp.(バンク・オブ・アメリカ)【都市銀行】 | 7.0% |
3 | Berkshire Hathaway Inc.(バークシャー・ハサウェイ)【保険】 | 6.9% |
4 | Wells Fargo & Co.(ウェルス・ファーゴ)【都市銀行】 | 5.4% |
5 | Citigroup Inc.(シティグループ)【都市銀行】 | 4.1% |
6 | US Bancorp.(USバンコープ)【地方銀行】 | 2.1% |
7 | American Express Co.(アメリカン・エキスプレス)【消費者金融】 | 2.0% |
8 | CME Group Inc.(CMEグループ)【取引所およびデータ提供】 | 1.7% |
9 | Goldman Sachs Group Inc.(ゴールドマン・サックス)【投資銀行】 | 1.7% |
10 | Chubb Ltd.(チャブ)【保険】 | 1.6% |
日本でも知名度のある企業が多く並んでいます。構成上位銘柄は、多少の順位入れ替えはありますが、2019年上半期と変わりません。
組み入れ割合1位のJPモルガン・チェースは、収益・時価総額で世界有数の大銀行です。事業内容は、商業銀行のJPモルガン・チェース銀行(CHASEブランドとして展開)と、投資銀行のJPモルガンに分かれます。
商業銀行というのは、私たちがイメージする一般的な銀行です。私たち消費者や企業向けに、お金の貸し出し・預かり、決済(支払い)手段の提供などを担っています。これに対して、投資銀行は、ざっくばらんに言ってしまえば、企業がM&A(合併・買収)や資金調達を行う際に、専門家の立場からアドバイス・お手伝いをするなどといった役割を果たしています。
組み入れ割合2位のバンク・オブ・アメリカ、5位のシティグループも、商業銀行と投資銀行、両方の事業を担っています。組み入れ割合4位のウェルス・ファーゴは、商業銀行に特化した銀行です。これら四つの銀行は、預金量などで多くのシェアを獲得していることから、アメリカの四大銀行とされています。
ちなみに、シティグループは、以前、シティバンク銀行として日本でも商業銀行業務を行っていましたが、2015年に撤退して、現在はSMBC信託銀行のPRESTIA(プレスティア)に引き継がれています。私も口座を保有しています。
組み入れ割合3位のバークシャー・ハサウェイは、投資家であれば皆知っているであろうバフェットが会長兼CEOを務めている会社です。傘下の子会社などを通じて、保険業に限らず、幅広い事業を展開していますが、実態としては、数多くの企業の株式を保有して運用する投資ファンド的な性格が強いです。
組み入れ割合7位は、日本でもAMEXブランドとして、クレジットカード事業を展開するアメリカン・エキスプレスです。バフェットの古くからの保有銘柄でもありますね。1960年代に、同社が詐欺事件に巻き込まれて多額の損失を被ったことで、株価が大きく値下がりしました。そんな中でも、バフェットは、アメックス株に資産の40%という集中投資を行い、一気に資産を増やしたというエピソードが有名です。
組み入れ割合9位は、世界最大級の投資銀行であるゴールドマン・サックスです。日本においては、激務・高給・実力主義の外資系金融というイメージが強く、アメリカの四大銀行よりも知名度があるかもしれませんね✨
VFH のサブグループ比率
1 | 都市銀行 | 28.8% |
2 | 地方銀行 | 14.6% |
3 | 動産保険・損害保険 | 8.1% |
4 | 取引所およびデータ提供会社 | 7.4% |
5 | 資産運用会社・資産管理銀行 | 7.3% |
6 | マルチセクター持株会社 | 7.1% |
7 | 投資銀行・証券会社 | 6.1% |
8 | 消費者金融 | 5.3% |
※2019年11月末現在(出典:Vanguard HPより作成)
VFH の配当金(分配金)推移

2005年以降、年4回の配当となっています。リーマン・ショックの傷は大きく、2008~10年にかけて3年連続減配となっていて、なかでも2009年は何と62.5%もの減配となっています。そうした事情もあって、年平均増配率(2005~19)も+3.6%にとどまっています💦
金融セクターは、JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなど、リーマン・ショック前の株価や配当金水準を上回って業績が伸びている企業と、バンク・オブ・アメリカやシティグループなど、未だにリーマン・ショック前の株価や配当金水準を超えられていない企業の差が鮮明です。
もっとも、アメリカの四大銀行は、ここに来て、近年増配ペースを加速させています。2019年の配当金は1.657ドルと、前年比で21.5%の増配となっていて、2年連続で20%超の増配率を記録しています✨
VFH の株価チャート(2004/1~)
VFH VS S&P 500

VFHが設定されたのは2004年1月26日で、設定来のリターンは+52.62%となっています。もちろん、S&P 500には大きく水をあけられている状況です。
リーマン・ショックまではほぼ連動していましたが、リーマン・ショック時の下落幅は何と最大80%程度と強烈で、差が開きました。それ以降もじわじわと差が開いていますが、2019年は配当を考慮すると、S&P 500とほぼ同じリターンにまで回復しています。
VFH VS S&P 500(トータルリターン)

※税金や取引手数料は考慮しない(出典:Vanguard HPより作成)
2008年のリーマン・ショックでVFHのトータルリターンは前年の半分になりました。その差が現在にいたるまで大きく響いている形ですね。もっとも、リーマン・ショック以後で比較しても、そのパフォーマンスはS&P 500にはかないません。
設定来のトータルリターンは+4.3%となっています。多くのバンガードセクターETFは2004年1月に設定されています。エネルギーセクターのETF(VDE)など、一部2004年9月に設定されたセクターETFもあるので、単純比較はできませんが、この数字は全セクター中でも最低の数値です。
まとめ
投資家にはリーマン・ショックの苦い記憶がいまだに残っているのか、PER(株価収益率)は10〜12倍程度と、業績のわりに株価が低い企業も多くみられます。配当金生活を見据えたうえでは、金融危機など景気後退時には減配が見込まれることも、懸念材料です。
そのせいか、バフェットも金融セクター、もっといえば銀行株を積極的に買い増しており、今ではJPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス、ウェルス・ファーゴの大株主になっています。ポートフォリオの半分弱が金融株になっています。
もっとも今日では、 金融(Finance)と技術(Technology)を融合した、フィンテック(Fintech)の動きが盛んであり、将来的に銀行の業務をIT企業が侵食していくのではないかという懸念はつきまといます。
かつて、1994年にビル・ゲイツは「銀行は、将来必要なくなる」と発言しました。まだその頃は、「何を言ってるんだ?」という感じでしたが、今日ではその発言も、現実味を帯びてきています。
金融セクターへの投資は、業績のわりに割安に放置された企業が多いことを、市場が過小評価しているとしてチャンスと捉えるか、それとも将来性が乏しいとみるかによって、変わりそうです✨