【ABBV】(アッヴィ)~世界一売れている医薬品を有する製薬企業!~

【更新情報】(2022/2/25)
2021年のデータに更新。大幅にリライト。

ゆーたんです♪

世界一売れている医薬品を有する製薬企業である、ABBV(アッヴィ、Abbvie)の銘柄分析です♪

目次

アッヴィってどんな会社?

Abbvieアッヴィ)は、イリノイ州ノースシカゴに本社を置く、製薬企業です。2013年にアボット・ラボラトリーズから、医薬品事業の新薬部門を分社化する形で誕生しました。世界にある75以上の国で48,000人の従業員がおり、日本にも拠点を置いています。


(Featured image by:Shutterstock)

お恥ずかしながら、私は米国株(アメリカ株)投資を始めるまで、この企業のことは知らなかったです。ただ、2021年の収益(売上高)は約562億ドル(約6.2兆円)であり、2020年時点では製薬企業の中で世界第4位となっています。同じアメリカではメルクに次ぐ収益で、メガファーマ(日本語でいう巨大な製薬企業)の一角です。

製薬企業といえば、日本の業界最大手である武田薬品工業を思い浮かべる人が多いと思います。それでも、2020年度の収益は約287億ドル(約3.2兆円)であり、アッヴィとはかなり開きがあります。

アッヴィの主力となる医薬品は、関節リウマチ治療薬「ヒュミラ(HUMIRA)」です。2002年にアメリカで、関節リウマチ治療薬として承認されたのが始まりですが、その後、乾癬やクローン病、潰瘍性大腸炎、非感染性ぶどう膜炎など、免疫にかかわる病気に対する治療薬として世界各地で幅広く使用されています。何とその収益は200億ドルを超えており、世界一売れている医薬品になります♪

アッヴィの業績

収益、営業利益、純利益

※グラフはIRデータより作成(以下同じ)

収益は、2020年にアイルランドの医薬品・医療機器大手のAllergan(アラガン)を買収したことにより、大きく伸びています。アラガンは、ドライアイ治療薬に使われるシクロスポリンなどのアイケアや、しわ取り薬のボトックスなど美容医療に強みを持つ医薬品・医療機器メーカーです。

収益の地域別内訳は、約77%がアメリカ国内、残りの約23%が海外といった具合です。

営業利益率はムラがあります。2018年の営業利益率が20%を割り込んでいますが、これは新薬の開発を担う研究開発(R&D)のための費用が約103億ドルに膨らんだためです。

具体的には、2016年にアメリカのがん治療薬メーカーStemcentrx(ステムセントルクス)買収の際に、資産として認識していた仕掛研究開発(IP R&D)費用を減損処理したからです。おおざっぱにいえば、研究成果が新薬開発につなげられそうだということで資産として計上したけれど、実際には新薬開発につなげられずに失敗したという感じでしょうか💦

米国の会計基準では、R&Dは発生時に即時費用処理されるため、R&Dの費用がかかるほど、営業利益率は低下し、純利益・EPSにも悪影響をもたらします。製薬会社においては、純利益・EPSがあまり投資指標としては参考にならないことに注意したいですね。



新薬開発はハイリスク・ハイリターン


(Featured image by:Shutterstock)

もともと製薬企業は、新薬の開発のために、研究開発費がどうしても多くかかりがちです。AmazonやApple、Google、Microsoftといった大手ハイテク企業ほどではありませんが、製薬企業の研究開発費はそれらの企業に次ぐ水準です。アッヴィも例外ではなく、2021年のR&Dは約70.8億ドルであり、これは収益の12.6%に相当します。

新薬開発が成功すれば、多額の利益を企業にもたらしますが、多額の研究開発費をかけたにもかかわらず、十分な安全性や有効性が確認できなかったために、製品化に至らなかった事例は、枚挙にいとまがありません。製品化できなければ、収益はゼロです。その意味で、新薬開発は、ハイリスク・ハイリターンの厳しい世界です💧

今日では、医療技術の進歩もあって、多くの病気で有効な治療薬が製品化されてきています。逆に言えば、まだ製品化されていないものは、現在の医療技術をもってしても治療が困難な病気ばかりです。ということは、それだけ研究開発費もかかりますし、新薬開発のハードルも高くなります。

なかなか、自社内の研究だけでは収益を期待できる新薬を開発することが難しい状況になってきています。そのため、大学や研究機関と連携したり、企業どうしの枠を超えて、共同して開発に取り組む動きも盛んです。研究開発には資金力のある大企業ほど有利なことから、M&A(合併・買収)も積極的に行われています。

Abbvie の製品別収益(2021年)

ここからは、アッヴィの収益構造について少し詳しく見ていきます。世界一売れている薬であるヒュミラが約37%を占めています。

2位のイブルチニブは慢性リンパ性白血病の治療薬です。2015年の販売以降、順調に収益を増やしてきました。2021年の収益は前年比+1.8%と伸びは鈍化しています。3位のスキリージは乾癬治療薬になります。2019年に販売開始された医薬品で、2021年の収益は、前年比で+85%の伸びとなっています。

4位・5位はボトックスで、元々アラガン社の製品になります。医療用は顔面や瞼の痙攣治療に、美容用はしわ取りなどの用途で使用されています。

アラガン買収の前のアッヴィは上位3つの薬で収益の80%を占めていました。アラガンの買収により、アッヴィのポートフォリオはかなり多様化されてきており、ヒュミラに頼らない収益構造が少しずつ出来上がりつつあるといえるのではないでしょうか。

ヒュミラの収益推移と今後について

アッヴィの屋台骨であるヒュミラの収益について、少し掘り下げます。ヒュミラの収益はこの11年間で3.2倍になっています。アッヴィの成長はヒュミラなしではありえず、「ヒュミラなくしてアッヴィなし」といえるのではないでしょうか。

もっとも、アメリカ国内の収益は順調に伸びていますが、アメリカ国外の収益は2019年以降、減少が続いています。その背景には欧州でのバイオシミラーとの激しい競争があります。

バイオシミラーとは、先に発売されたバイオ医薬品と、同等・同質の品質・安全性・有効性が確認された、後発のバイオ医薬品を指します。ジェネリック医薬品と似たような感じですが、ジェネリック医薬品はいわば有効成分や効果が「同一(まったく同じ)」の医薬品であるのに対し、バイオシミラーは「同等・同質(同じような)」となっています。バイオ医薬品の場合は構造が複雑で、完全に同一の医薬品を作成することが困難だからです。

ヒュミラの特許は2016年に切れています。これだけの収益をもたらす医薬品が特許切れとなれば、他の企業も黙ってはいません。アメリカ国内での収益が伸び続けているのは、アメリカ国内では依然として特許で保護されており、バイオシミラーの販売が2023年になるためです。

しかし、2023年以降、アメリカでもバイオシミラーが発売されれば、大幅な収益減は避けられません。そこでアッヴィがとった策が、2020年のAllergan(アラガン)の買収でした。買収金額は約630億ドル(約6.7兆円)で、2019年のアッヴィの純利益(約72.8億ドル)8.6年分、フリーキャッシュフロー(約127億ドル)5年分に相当するほど巨額です。

アラガンの株価に45%ものプレミアムを乗せた、巨額買収でもあったため、2019年6月に買収が発表された時には、アッヴィの株価は前日比-16.4%もの強烈な下落となりました。

買収発表当時はその巨額買収を疑問視する声もあったようですが、当初の目論見通り、ヒュミラが収益に占める割合は順調に低下してきており、2018年時点では60%を超えていたヒュミラへの依存度は40%を切る水準まで低下してきました✨



EPS、調整後EPS、BPS

収益の部分でも述べたとおり、製薬会社は巨額の研究開発費(R&D)を計上しており、保有資産の減損処理も頻繁に行なっているため、EPSの数値は凸凹しています。

一方で、会社が独自に発表している調整後EPSの数値は、EPSと大きく異なっています。主な要因は、無形資産(形のない資産。特許権や商標権などの知的財産や人的財産など)の償却費が、EPSでは売上原価として計上されている(=利益の押し下げ要因)のに対し、調整後EPSでは除外されているためです。

調整後EPSの算出方法は会社の裁量に委ねられていますが、あくまで無形資産の償却費は会計上の費用であって実際に支出を伴う費用ではないからだと思われます。

調整後EPSの伸びは凄まじく、直近5年間で年率+21.4%となっています。収益の伸びの割に、売上原価、販売費及び一般管理費の伸びが抑えられています。企業買収の成果が出ていますね。

BPS(1株あたり純資産)についてですが、2018,19年はBPSがマイナスでいわゆる債務超過の状態になっていました。21年現在はプラスに転換していますが、自己資本比率は10%少々と心もとないです。

アラガン買収に伴い、長期借入金(含:リース債務)も、2021年末時点で約642億ドルと巨額になっています(昨年の約775億ドルからは減少に転じています)。これはアッヴィの2021年のフリーキャッシュフロー3年分に相当します。債務が多いことから、S&Pの信用格付けはBBB+にとどまり、他の製薬会社と比較して見劣りする点はやや注意が必要です。

もっとも、キャッシュフローは潤沢なのでさほど心配はしていませんが、早めの債務圧縮が望まれるところです。

キャッシュフロー(CF)

ここでいう設備投資は有形固定資産(研究施設など形のあるもの)を指しています。製薬会社は巨額の研究開発費を投じていますが、その分は費用計上されているため、設備投資の数字には表れてきません。

キャッシュフローは右肩上がりで全く問題ないです。フリーキャッシュフローは主に配当と債務の支払いにあてられています。



アッヴィの配当

※配当金の年次は宣言日ベースです。例年10〜11月に増配を発表し、支払いは翌年2月ですが、この配当は発表時の年次として計算しています。

分社化した2013年以降の配当ですが、好調な業績を背景に、8年間で3倍以上となっています。2021年10月には四半期あたり$1.30→$1.41と、+8.5%の増配を発表しており、年平均の増配率(2013〜21)は+16.2%となっています。

EPSは変動が大きいため、会社が独自に発表している調整後EPSで配当性向を見ると、その数字は概ね40%台で推移しており安定しています。フリーキャッシュフローで見た配当性向も40%台であり、心配はいらないかと思います。自社株買いは、直近5年でみると、2018年を除いてそれほどでもなく、基本的には配当で株主に還元する会社となっています。

アッヴィのトータルリターン

S&P 500(SPY)との比較(2013/1〜)

ABBVの株価は、2018年1月に123ドル台を付けていましたが、その後一転して下落トレンドに転換しており、19年8月時点では65ドル台と、最高値から5割近く下落しました。

一番最初にアッヴィの銘柄分析を書いたのはちょうどこの頃で配当利回りは6%台とまさしくお宝ポジでした。そこから株価は大きく反転しており、S&P 500を大きく上回っています。

これだけ株価が上昇しているにもかかわらず、EPSが急速に伸びていることもあって、2022年の調整後EPS見通しで見た予想PERは10.3倍と割安感があります。ただ、2023年にヒュミラの特許が切れて以降は、収益やEPSが伸び悩むことも予想され、ここから積極的には買いを入れにくいかもしれません。

まとめ

  • アラガンの買収により、ヒュミラに頼らない収益構造を確立しつつある。
  • 収益の伸びの割に、コストはそれほど増加しておらず、調整後EPSの伸びは年率20%超え。しかし、ヒュミラの特許切れに伴い、2023年以降の伸びは鈍化する見込み。配当の伸びもそれに合わせて控えめになる可能性
  • 借金が多く、財務状況に不安が残る。ただし、キャッシュフローは潤沢であり、現時点ではあまり心配は不要。

私の保有状況・所感

私はアッヴィを保有しています。2019年4、6月、20年7、9月、21年9月と段階的に買い増しています。

製薬会社は常に新薬開発というプレッシャーに晒されています。大ヒット薬がどの企業から出るのか、将来を見通すことは難しく、不確実性は高いですが、資金力や人材確保の面で、規模の大きい企業が有利であることに変わりはなく、その意味でアッヴィは有利な立場にいます。

世界全体で見ても、今後高齢化がじわりじわりと進んでいく中で、個人的にはヘルスケアセクターの将来性は高いと考えています。特に製薬会社は高配当の会社が多く、投資対象としても魅力的に映ります。分散を徹底しつつ、買い増していきたいですね✨

情報開示:この記事は私自身が書いたものであり、私の意見を表しています。私はこの記事から報酬を受け取っておらず、この記事で言及されている会社と直接のビジネス関係はありません。

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