ゆーたんです♪
2019年も8月に入って、米中貿易摩擦の激化で大きく円高が進みました。果たして、この後も円高になるのか、円安になるのか、気になりますよね。
短期的なことはわかりませんが、今日は長期的な視点から自分の考えを述べてみますね。
先に結論から♪
(Featured image by:Shutterstock)
今回は結論から先にいいます。
円高、円安になるかはわかりません!(笑)
ただし実質的には円安が進むと自分は見ています。
ドル円相場の推移(1980~)

まずは、ドル円相場の現状について見てみます。
このグラフの見方ですが、上にいくほど、円高(日本の円が強くなる)、下にいくほど円安(日本の円が弱くなる)になります。1995年以降は、75~150円のレンジで推移していますね。
ドル円相場は、2013年に始まった量的・質的金融緩和政策(異次元緩和、通称:黒田バズーカ)で大きく円安に進み、 2015年には一時125円台まで株安が進みました。しかし、翌2016年には揺り戻しが起こります。6月には、予想に反して、イギリスの国民投票によるEU離脱が決定したことで、一時98円台まで暴落しました。2017年以降はおおよそ105~115円の間での狭いレンジ相場が続いています。長期的には、円高とも円安とも言えない水準ですね。
資産の大半を米国株(アメリカ株)に投資している私にとっては、1円変動しただけでも大きな資産変動があるのですが、今は歴史的にみても変動幅の少ない、ある意味「ぬるま湯」相場といえるかと思います。
金融緩和は、金利を引き下げたり、市場に大量のお金を供給したりするので、基本的には通貨安圧力がかかります。
日本銀行は2013年以降、ずっと金融緩和を続けているのですが、ヨーロッパ諸国、オセアニア諸国も金融緩和策をとっていたり、ポンドはEU離脱のゴタゴタっぷりが続いていたりして、ドル以外の通貨でみると、結構な円高となっています。
利上げを続けていたアメリカも、2019年に入り、利下げに転じてしまいましたから、1ドル=115円を超えて円安が進むというのは、短期的には中々想定しにくいところです。
(参考)ドル円相場と実効為替レートの推移(1980~)

ドル円相場は、あくまでドルと円の関係性なので、他通貨も含めた円の総合的な強さがわかりません。そこで、実効為替レートというものが日本銀行から発表されています。実効為替レートとはドルだけでなく、対象となるすべての通貨と日本円との2か国間の為替レートを、貿易額などではかった相対的な重要度でウェイトを付けつつ、算出したものです。
このグラフの見方も同じで、上にいくほど円高、下にいくほど円安となります。
両者の動きはおおむね連動していますが、基本的にはドル円相場のほうが数字が低くなっています。ということは、このおよそ40年間で円高が進んでいる一方、比較的ドル高も進んでいることがわかります。
もっとも、この実効為替レートは名目値であり、物価変動による影響を大きく受けています。
例えば、1ドル=100円の状況で、アメリカの物価が2倍になり、日本の物価がそのままだったと仮定してみましょう。理論的にはドルの価値が半分になったのですから、1ドル=50円になるはずです。
つまり、物価上昇率が高い国は、通貨の価値が下がりやすく(=通貨安になりやすい)、反面、物価上昇率が低い国は、通貨の価値が保たれやすい(=通貨高になりやすい)傾向にあります。
こうした物価変動による影響を取り除いたのが、実質実効為替レートです。実質実効為替レートは、「真の通貨の強さ」をあらわしたものということができるでしょう。実質実効為替レートで見ると、また違った景色が見えてきます。
実質実効為替レートの推移(1980~)

このグラフも今までと見方は同じです。一番、円が強かったのは、1995年ごろです。一時円相場は、当時の史上最高値となる79円75銭を記録しました。この数字は、16年後の2011年に破られ、その年の10月には現在の史上最高値となる75円32銭を記録しています。
リーマン・ショックをきっかけに急激な円高が進み、2010~12年ごろまで「超円高」として騒がれた時代が続きましたが、それでも1990年代と比較すると実質的に円安だったことがわかります。
先ほどのドル円相場や名目実効為替レートのグラフを見る限りでは円高が進んでいるように見えますが、それは諸外国の物価上昇率と比べて、日本の物価上昇率が低すぎたからということがこの実質実効為替レートのグラフからわかります。
1995年以降は、上下動こそあるものの、基本的に円安トレンドとなっており、円の価値は過去40年間で「最も低く」なっています。つまり、現在の円は歴史的な円安水準にあるということです。
これからの為替相場はどうなる?
もしかしたら今は歴史的な円安水準だから、外国株への投資はこの水準が是正されるまで控えようと思う方もいるかもしれません。しかし、私は、長期的にはこの水準が「普通の水準」になるばかりか、下手もすればさらに実質実効為替レートで見て、円安が進む可能性があると思っています。理由としては以下の三つです。
- 世界での日本のプレゼンス(存在感)低下
- 日本の中にある「通貨安」志向
- 長期間続く日銀の金融緩和
世界での日本のプレゼンス(存在感)低下
2010年に中国に抜かれたとはいえ、日本はいまだ世界3位の経済大国です。その意味で、世界での日本のプレゼンスは大きなものがあります。しかし、この20年間、日本経済の成長はほとんど止まってしまいました。それを端的に示すのが次のグラフになります。
世界のGDPに占める日本のGDPの割合

世界のGDPに占める日本のGDPの割合は、1990年代前半をピークに低下し続けています。ピーク時は世界のGDPの約1/8を占めていた日本経済も、今や約1/14まで落ち込んでしまいました。
ちなみに、先ほどの実質実効為替レートとのグラフを重ねてみてみると、以下のような図になります。

このように重ね合わせてみると、世界のGDPに占める日本のGDPの割合が低下するにつれ、実質実効為替レートも円安になっているように見えます。
私は、実質的な通貨の強さと国力(経済力)はある程度比例すると考えています。事実、発展途上国の物価は安く、先進国の物価は総じて高くなっています。
これから、日本が世界経済に占める地位がますます低下していくであろうなかで、実質的に円の価値が強くなることは、正直考えにくいです。逆に、日本が人口減少の中でも、急速に経済発展を遂げて、1人当たりのGNI(国民総所得)で再び上位に食い込むようなことがあれば、実質的に円の価値は強くなると思っています。
日本の中にある「通貨安」志向
日本には、自動車産業などを始め、輸出企業(商品を海外に輸出することを主とする企業)が多く存在しています。よくニュースなどで、日本株においては「円安を好感とした株価上昇」なんていわれることがありますが、それは輸出企業の場合、円安になると、収益や営業利益が上昇するからです。
世界でもTOP10に入るほどの収益(売上高)を誇り、堂々の時価総額国内1位であるトヨタ自動車は、1円の円高で営業利益が約400億円も失われるといわれます。もし、また90円台まで円高が進むようなことがあれば、株価も今よりは下がっているでしょうし、何より産業界は黙っていないでしょう。日銀は追加緩和を余儀なくされるのではないでしょうか。
長期間続く日銀の金融緩和
日本銀行は、2013年から量的・質的金融緩和政策を続けています。当初は、「物価上昇率2%を2年程度で実現する」ことを掲げていました。しかし、その目標は中々実現できず、6年以上たった今日においても金融緩和政策は続いています。金融緩和政策が続いている間は、通貨安圧力がかかり続けます。
それに2019年に入って、アメリカは利下げに踏み切っていますし、量的緩和が終了したユーロ圏でも利上げが2020年夏以降に延期されるなど、諸外国も金融緩和政策から脱却できずにいます。かつて高金利通貨の代表格であったオーストラリア、ニュージーランドの政策金利は1%まで下がっています。
世界的な低金利が続く中で、日本が金融緩和を終了して、利上げに踏み切るというのは、大幅な円高進行を招くリスクがあります。現状では考えにくいシナリオです。
まとめ
「この先、円高・円安になるのか」というのは、経済評論家でも意見が割れるテーマです。あくまで一個人の意見として、参考程度に見てもらえたらと思っています。
私が米国株投資をメインとしているのは、「将来的に円の価値はもっと下がっていく」と考えているからです。今後、日本は本格的な人口減少社会に入るとされ、2020年代に入ると毎年40万人以上の人口が減っていくと試算されています。人口40万人というと、岐阜市とか宮崎市くらいの人口規模です。
こうした状況のなかで、「日本経済が急速な経済成長を描く、円の価値も上がっていく」というシナリオは、いくら考えても自分の中には描けませんでした。でも、自分はセミリタイアしても、日本で住み続けていきたいと思っています。私の予想がいい意味で外れてくれることを祈ります✨