ゆーたんです♪
今週の米国株ですが、私が保有しているAT&Tの第3四半期決算が発表されました。決算はまずまずでしたが、株価は4%を超える上昇となりました✨

(Image By:Adobe Stock)
第3四半期の決算について、「何で株価が上昇したのか?」という点にも触れつつ、主に財務の面から振り返ってみますね。
第3四半期決算ハイライト
AT&Tについては銘柄分析も書いています。昨年までの業績・配当・株価などのデータはこちらをご覧ください♪

| (第3四半期決算) | 2019 | 2018 | 前年比 |
| 収益(売上高) | $449.5億 | $457.4億 | -2.5% |
| 営業利益率(調整後) | 17.7% | 15.9% | +1.8Pt |
| 調整後EPS | $0.90 | $0.94 | +4.4% |
収益だけ見ると数字は良くありませんが、営業利益率や特殊要因などを除いた調整後EPSは前年比でプラスになっています。設備費やエンターテイメント事業における制作コストの削減が功を奏したようです✨
収益で見ると、主力のモビリティ事業(アメリカでの携帯電話事業など)は-0.2%と微減で済みましたが、エンターテイメント事業(DIRECTVなどの衛星放送サービスなど)は-3.4%、買収したワーナーメディアの事業も-4.4%と不振でした。
ワーナーメディア事業は昨年買収したばかりなので、比較がしにくいのですが、エンターテイメント事業は、2019年累積の業績も前年比で-1.8%と冴えない状況が続いています💧
また、ビジネスワイヤライン事業(法人向けサービスなど)も-2.7%、国外事業(メキシコでの携帯電話事業など)も-5.6%と落ち込みが酷いです。唯一、広告事業のXandrは、前年比+13.3%となっていますが、収益に占める割合はわずか1%程度にすぎず、影響は限定的です💦
参考までに2019年累計(第3四半期まで)のデータも掲載しておきますね。
| 2019年累計(第3四半期まで) | 2019 | 2018 | 前年比 |
| 収益(売上高) | $1,343.7億 | $1,227.6億 | +9.5% |
| 営業利益率 | 16.8% | 16.2% | >+0.6Pt |
| 調整後EPS | $2.69 | $2.66 | +1.1% |
ワーナーメディア買収の成果もあって、収益は前年比で大きくプラスになっていますが、調整後EPSはほぼ横ばいとなっていますね💦
ちなみにAT&Tは今回のプレスリリースで、2020年の調整後EPSを$3.60~3.70、22年の調整後EPSを$4.50~4.80と予想を立てています。この目標は結構ハードルが高くて、2020年以降、年10%を超えるペースでEPSを上昇させなくてはなりません。
もし実現すれば、増配率のアップ・株価上昇が期待できますが、どうでしょうか。
なぜ株価が上昇したの?
見ての通り、決算の数字はあまりよくありませんでした。それでも株価が上昇したのは、AT&Tに約32億ドルを投資している、投資会社エリオットが求めていた、事業の見直しや株主価値の向上という主張を、AT&Tの経営陣が概ね受け入れたからです。
投資家にとっては、経営陣とエリオットの対立がとりあえずは解消されそうだということで、ガバナンス(企業統治)上の不確実要因が一つ消えて、株価の上昇につながったというイメージでしょうか。
既にAT&Tは下記ブルームバーグの記事にもあるように、プエルトリコとアメリカ領バージン諸島の事業を売却したり、保有株やオフィスの売却を積極的に進めるなどして、資産の売却を急いでいます。
今回の決算報告では、2019年に140億ドル、2020年に50~100億ドルの資産売却を実施予定と表明しており、資産の現金化により、タイムワーナー買収でさらに膨らんだ債務の削減を進めていく模様です。

そして決算報告では、あわせて継続的かつ緩やかな増配、今度3年間は大規模な買収を行わないことも約束しています。
AT&Tの会長兼CEOは、今回の決算報告で「エリオットとの関わりは建設的で有益だった」とまで言い切っています。もちろん、エリオットも今回に決算報告を歓迎しているようで、ひとまずは安心ですね✨
配当は大丈夫なの?
AT&Tは2019年9月末時点で1,536億ドル(約16.6兆円)の長期債務を抱えており、おそらく世界一債務を抱えているであろう企業です。
しかも、もうここ10年は四半期あたり0.01ドルという緩やかな増配が続いています。「配当は大丈夫?」というのは誰もが思う点ではないでしょうか。
| 配当 | EPS | 配当性向 | 調整後EPS | 配当性向(調整後EPS) | |
| 2019年第3四半期まで | $1.53 | $1.57 | 97.5% | $2.69 | 56.9% |
配当性向の割合は100%近くになっています。合併に関連した費用などを除いた調整後EPSで見ると、そこまで高い値ではありませんが、不安は残りますね。
キャッシュフロー(CF)の面からも見てみようと思います。
| (第3四半期) | 2019 | 2018 | 前年比 |
| 営業CF | $113.9億 | $123.5億 | >-7.8% |
| フリーCF* | $62.0億 | $64.7億 | >-4.2% |
| 配当金支払い額 | $37.3億 | $36.3億 | +2.6% |
| 配当金支払い額/フリーCF | 60.0% | 56.1% | +3.9pt |
第3四半期は、フリーCFの60.0%を配当金支払いに充てています。数値だけ見れば比較的余裕があるようにみえます。しかし、AT&Tはこの第3四半期だけでも利子(利息)を25.3億ドル支払っています。その分も考慮に入れると、結構な綱渡りの状態であることがわかりますね。
事実、第3四半期のAT&Tは、82.4億ドルの長期債務を返済する一方で、新たに50億ドルの長期債務を発生させています。現金など保有額は、昨年の第3四半期では87.9億ドルでしたが、今期は67.8億ドルまで減少しています。
今は世界的に低金利だからよいものの、(確率は低いと思いますが)何かをきっかけに金利が大きく上昇するようなことがあれば、利払い費が増加し、減配リスクも高まることは、念頭に置いておいたほうがよいかもしれません💦
9か月累計のデータも見てみますね。
| 2019年累計(第3四半期まで) | 2019 | 2018 | 前年比 |
| 営業CF | $367.3億 | $315.2億 | >+16.5% |
| フリーCF* | $208.8億 | $144.2億 | >+44.8% |
| 配当金支払い額 | $111.6億 | $97.8億 | +14.1% |
| 配当金支払い額/フリーCF | 53.4% | 67.8% | >-14.4Pt |
第1・2四半期の貯金もあって、フリーCFは前年同期比で大きく増えています。利子(利息)は2019年累計で69.4億ドル支払っていますが、その分を考慮に入れても、フリーCFに占める割合は9割弱なので多少の余裕がありますね✨
まとめ
- 収益は減少も、コスト削減が功を奏し、営業利益率・調整後EPSはやや改善
- キャッシュフローはやや悪化も、9か月累計でみれば依然として良好
- 配当支払いはキャッシュフローの面で余裕はあるが、利子(利息)を考慮に入れると、結構な綱渡り。金利上昇がリスク要因。
AT&Tの株価はこの半年間で+24.6%も上昇しています。とはいえ、調整後EPS(直近12か月実績)でみたPERは依然として10.8倍と割安な水準に据え置かれています。
長期債務の多さは気がかりですが、携帯電話事業というのは、設備投資が常にかかる分、安定したキャッシュフローがもたらされるのでそれほど心配はしていません。それに、長期債務自体も昨年と比較して126.8億ドル減少しています(まだまだ多いですけどね💧)。
もっとも、金利上昇により利払い費が増加するリスクもありますので、持続的な配当、増配率アップのためにも、早めの債務圧縮が望まれるところです。
私は、ETFによる間接的な保有分も考慮に入れれば、その保有割合は3%を超えていて、MO(アルトリア)と1,2を争います。AT&Tは30年を超える増配の歴史があります。高配当株の代表格として、これからも見守っていければと思います✨

