ゆーたんです♪
DMM株が取引手数料を無料化するというニュースが報じられました✨
私もこのような動きは、米国株取引におけるネット証券大手3社(SBI、楽天、マネックス)にも競争を迫るものであり、当初ポジティブに捉えていました。
とはいっても、このニュースを聞いて「どうやって収益を得るの?」と思った方もいるかもしれません。実際、私もそう思いました。
企業は慈善事業ではありません。一時的に赤字覚悟のキャンペーンをすることはあるかと思いますが、長期的には利益をあげなければ、事業としては存続できません。
今回のヒントを解く鍵は「為替手数料」と「強制円貨決済」です。DMM株の為替手数料は以下のようになっています。
なお、買付注文時には参考レートのTTSを用いて計算し、売却注文時には参考レートのTTBを用いて計算します(TTSとTTBには、原則として50銭の為替スプレッドがあります)。
(出典:DMM HP)
仲値(基準レート)に手数料を足したTTSと、仲値から手数料を引いたTTBの差が50銭ということなので、買付・売却にかかる為替手数料は25銭になります。これは、楽天証券と同水準です。
そして、DMM株は、他のネット証券大手3社では可能な外貨決済ができず、円貨決済しかできないという点に特色があります。後ほど触れますが、ここが大きなポイントになります。
そのことを踏まえたうえで、実際のところ、DMM株が最安値なのか、検証してみると、確かに最安値ではあるのですが、ある条件下では最安値にはならない(カラクリがある)ことがわかりました。その話について書いてみますね✨
米国株手数料の各社比較
米国株手数料について、大手ネット証券3社とDMM株を一覧形式でまとめてみました♪
※2019/12/10時点 | SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 | DMM株 |
取引手数料 | 0.495%(税込、最大$22)※1 | 0.495%(税込、最大$22)※1 | 0.495%(税込、最大$22)※1 | 0% |
為替手数料 | 4銭 ※2 | 25銭 | 0銭 ※3 | 25銭 ※4 |
※1:2020年1月より、VTIやVOOなど、9銘柄の米国ETFが実質無料で買い付け可能
※2:住信SBIネット銀行経由。SBIFXαによる現引でさらにコストを抑えられる(0.2銭)が、最低取引額が10,000ドルとなる
※3:買付時(円→ドル)(ただし、定期的な見直しにより変更の可能性あり)。売却時(ドル→円)は25銭。
※4:配当金入金時の為替手数料は1円(後述)
シミュレーション結果〜DMM株の手数料は確かに最安値!〜
ここからは実際にどのくらい手数料に違いが出るのか、シミュレーションしてみますね。ここでは、毎月10万円(年間120万円)投資した場合で考えてみます(計算を単純化するため、為替レートは1ドル=100円と仮定)。
SBI証券:取引手数料5,940円、為替手数料480円、合計6,420円
楽天証券:取引手数料5,940円、為替手数料3,000円、合計8,940円
マネックス証券:取引手数料5,940円、為替手数料0円、合計5,940円
DMM株:取引手数料0円、為替手数料3,000円、合計3,000円
ご覧の通り、DMM株が最安のマネックス証券よりも2,940円安いという結果になりました✨
なお、為替レートによって結果も多少変化します。具体的には、円高になるほどドル建ての金額が大きくなるため、DMM株不利になり、逆に円安になるほどドル建ての金額が小さくなるため、DMM株有利になります。
一応計算上は1ドル=50.5円より円高になると、マネックス証券が有利になりますが、この水準まで円高が進むというのはちょっと非現実的なので、まずDMM株有利と考えて良いと思います。
ちなみに投資金額の大小は、手数料の合計金額は変わるものの、優劣には影響を与えません(ただし、上限手数料を考慮すると、話は変わります)。
配当金や配当再投資を考慮するとDMM株は不利になる場合も!
「やっぱりDMM株有利じゃん?」といいたいところですが、他にも検討すべき要素があります。
それは、みんな大好き(少なくとも私は大好き💕)な配当金です。DMM株のサイトにはこのように書かれています。
配当金は円貨で入金されるようです。しかし、このページには具体的な為替レートが記されていません。
てっきり私は、初めに紹介した参考レートのTTS・TTBが適用されるものだと思い込んでいました(実際にカスタマーサポートにも問い合わせました)。
しかし、他の方のツイートやブログ等では「片道1円」と紹介しているものもあり、疑問に思って改めて問い合わせの内容を読み返してみると…以下のように書かれていました。
「米国株の配当金については公示レートのTTBを使用しています」
それ以上のことは何も書かれていなかったので、当時の私はてっきり早合点してしまいましたが、公示レートというのは銀行で取引される基準となるレートです。
ドル円の場合、TTSとTTBの差は2円、つまり、配当金が円貨で課されるたびに、為替手数料が1円(100銭)かかることになります。
ということは、配当金の出る株を保有すればするほど、DMM株の場合はコストがかさむことになってしまいます💦
(注)記事執筆当時は記載がありませんでしたが、現在は、以下のページにて、配当金の為替スプレッドが明記されています。
そういった事情もあり、改めて再計算してみました✨
先ほどの条件、毎月10万円(年間120万円)投資のうち、月2.5万円(年間30万円)を配当再投資でまかなうと仮定して再計算してみます(計算を単純化するため為替レートは1ドル=100円と仮定)。
SBI証券:取引手数料5,940円、為替手数料360円、合計6,300円
楽天証券:取引手数料5,940円、為替手数料2,250円、合計8,190円
マネックス証券:取引手数料5,940円、為替手数料0円、合計5,940円
DMM株:為替手数料3,000円(買付分)、3,000円(配当分)、合計6,000円
このように、投資金額の25%を配当再投資でまかなうと仮定すると、マネックス証券とDMM株の優劣が逆転します。
為替レートが1ドル=100円という設定下においては、配当再投資の割合が投資金額の28.4%以上だとSBI証券より不利、さらに投資金額の39.6%を超えると、楽天証券よりも不利になります(これより円高の場合は、分岐点の水準が切り下がり、円安の場合は切り上がります)。
米国株の手数料完全無料化には時間がかかる?
(Featured image by:Shutterstock)
これまで見てきたように、今回の取引手数料無料化でDMM株は、ネット証券大手3社を抜いて最安値になりますが、配当再投資をするという前提に立てば、必ずしも最安値にならない場合があることがわかりました。
配当時の割高な為替手数料はいただけませんが、それでも取引手数料無料化は歓迎すべきことです。もっとも、今回のDMM株の手数料体系を見るにつけ、完全無料化への道のりはまだまだ長いと感じています。
投資信託は、信託報酬という残高に応じた収益源を得られるため、取引手数料無料化のハードルが低くなっています。しかし、株式取引は、取引手数料を徴収しなければ、それ以外の収益源が乏しいです。
たよりの外貨手数料も、強制円貨決済されるDMM株と違って、外貨決済が可能なネット証券大手3社は、DMM株より為替手数料を取りにくいので、どうしても単体で採算をとることが難しくなります。
そう考えると、証券会社が株式取引じゃなくて、投資信託の販売に力を注ぐのも納得できる気がします(楽天証券とか露骨ですもん…ほんと💦)。
今はやりのサブスクにたとえるのが適切かどうか分かりませんが、長期投資家の株式取引は1回の買いで完結し、手数料を払えばそれぽっきりです。
他方で、長期投資家が保有する投資信託は、売却されない限り、毎月安定・継続的に信託報酬からの収益が得られるからです。
その意味では、長期投資家の株式取引という1回の買いで完結する取引に、配当金の強制円転による、割高な為替手数料収入という安定・継続的な収益を確保したうえで、インパクトの大きい取引手数料の無料化を打ち出したDMM株の戦略はしたたかといえるのではないでしょうか。
もっとも、DMM株で購入した米国株をすぐに他社に移管されてしまったり、投資家が無配株ばかりを購入したりすれば、為替手数料で儲けるビジネスモデルはうまく回りませんが、このようなことをする顧客は少数なのではないかなとも思います(もっとも広く周知されれば、株式出庫の有料化など、何かしらの対策が採られることと思います)💧
あとがき
DMM株は、今まで見てきたように、取引手数料ではなく、為替手数料で儲けるビジネスモデルになっています。
米国株投資家のなかでも、特に配当金を重視する投資家からは敬遠されそうなことや、取り扱い銘柄数もまだ少ないことから、しばらくはネット証券大手3社も静観するのではないでしょうか。
しかし、取引手数料無料が与えるインパクトは大きいもので、仮に今回の発表でネット大手証券3社からDMM株に顧客が流出するようなことがあれば、他社も何らかの対応を迫られることになると思います。今後の動向に注目ですね✨