ゆーたんです♪
11月下旬に、読売新聞が「NISA一本化へ」と報じたことを受けて、以下の記事を書きました。
その後、共同通信から「NISAの一本化は見送り。一般NISAが2024年以降も形を変えて存続」という報道がありました。そして、12月に入って、日経新聞が新NISA制度の概要を報じています。
(Featured image by:Shutterstock)
一言でいえば「どうしてこうなった?」という印象が強いです。あまりに新制度が予想の斜め上すぎたので、いてもたってもいられず、記事を書き起こすことにしました✨
新NISA制度の課題点~複雑な制度はかえって投資意欲をそぎかねない~
個人に安定した資産形成を促すというもと、2014年に始まったNISA制度ですが、当初の意に反して、短期売買のために使われていることもあったようで、安定した資産形成という目的と相反するだけでなく、税の優遇にもなっているという批判がありました。
そうした批判にこたえるために設計されている新NISA制度ですが、何というか突っ込みどころが多すぎます。
まだ記事からだけでは判断できない部分もありますが、個人的には以下のような問題点があると思っています。一つ一つ簡単に触れますね。
- 年間投資額が中途半端
- 2階建て、縛りありの「誰得?」な制度
- 投資できる金融商品に制限がかかる恐
年間投資額が中途半端
今回の新NISA制度ですが、投資可能額が年間122万円になっています。
NISA制度発足当初の年間100万円という投資可能額は、数字としてキリがいいものになっていましたし、2016年に投資可能額は年間120万円(つまり月間では10万円)に引き上げられましたが、これまたキリのいい数字でした。
もちろん、年間2万円でも投資可能額が増えるのはありがたいのですが、122万円というのはいささか中途半端な数字です。どうしてこんなキリの悪い数字にしてしまったのでしょうか…💦
2階建て、縛りありの「誰得?」な制度
今回の新NISA制度は、報道にある通り、積み立て枠(対象商品はリスクの低い投資信託などに限定)の1階部分(年間20万円)と、従来通りのNISA枠(上場株式などにも投資可能)の2階部分(年間102万円)に分かれるようです。
1階部分は、現行のつみたてNISAとほぼ同じイメージと考えてよいでしょう。しかも、厄介なのは、その1階部分に投資しないと、2階部分に投資できないという謎の縛りを持ってきたことです(日経の記事によれば、投資経験者は1階部分に投資をしなくても2階部分に投資できる例外も設けるとありますが、税制大綱には記載がありませんでした)。本当に「誰得?」な制度と言わざるを得ません💦
こんな使いにくい制度にするくらいなら、個人的には好みではありませんが、まだ「つみたてNISAの枠を増やして、一本化したほうがよいのでは?」とさえ思ったりもします。
投資できる金融商品に制限がかかる恐れ
報道によれば、リスクが高く、資産形成に不向きの金融商品については除外する方向とありますが、これは、いわゆるレバレッジ金融商品(指数の値動きよりも、変動幅が大きくなるように設計された金融商品)を指しているかと思います。
特に槍玉に上がっているのが、国内ETFのNEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信でしょうか。SBI証券の週間買付金額ランキング(NISA枠の国内株式、2019/12/2〜12/6)でも9位に入っています。
この金融商品は、日経平均株価が下落すると下落幅の2倍の利益が出るように設計されたものです。逆にいえば、日経平均株価が上昇すると上昇幅の2倍の損失が出ます。ここでは深入りしませんが、その性質上、相場が横ばいで推移しているときでも、徐々に価格は下がっていくしくみになっており、設定来のチャートは以下のようになっています。
このチャートを見れば一目瞭然ですが、取引値は右肩下がりになっており、どうみても長期投資に向くような金融商品ではありません(もっとも、こういう金融商品が売れるのはある意味仕方ないかなあとも思っています。日経平均株価はいまだにバブル期の最高値を超えられておらず、「右肩上がりで成長」していないからです💦)。
とはいっても、こうした金融商品がそれほどNISA枠で使われているのかといわれれば、正直どうなんでしょうか…
先ほど、SBI証券の週間買付ランキングで9位に入っていると書きましたが、これはあくまで国内株式を対象にしたものです。
SBI証券のNISA枠での投資信託を対象とした、同期間の週間買付ランキングは、10個中7個が、日本株や米国株、先進国株などの市場平均に連動するインデックス投資信託です(ちなみにそれ以外の三つはアクティブファンドの代表格であるひふみプラス、最近話題のグローバル3倍3分法ファンド、あとは8資産配分のバランスファンドです)。
そして、国内株式のランキングでも、1位はJT(日本たばこ産業)、2位はソフトバンク、7・8位にメガバンクの青(みずほFG)と赤(三菱UFJFG)というように、安定高配当銘柄が占めています。
そもそも損益通算ができないこと、一度売ってしまったNISA枠は復活しないことなど、NISA枠を短期売買に使うには不利な点が数多くあります。
また「リスクが高く、資産形成に不向きの金融商品」をどの基準で選定するかという難しさもあります。例えば、ボロ株(業績が悪くて株価が低迷している株)の株式取引も、長期投資といえない面があるのですが…そのあたりはどうするんでしょう💦
まとめ
そもそも現行のNISA制度が短期売買に使われていて、税の優遇になっているというのであれば、投資可能額を多少増やして、つみたてNISAに一本化するか、あるいは現行NISAはそのままに、対象となる金融商品を一部除外すれば済むような気がしています。
どうしてこんな複雑な制度設計になってしまったのか、「投資ってやっぱり何だか難しいな…」というように、かえって個人の安定した資産形成を遠ざける結果になりやしないかと思うと、率直にいって残念です。
税制を構築する際には、公平(経済力が同じ人には同じだけの税負担を求める、経済力のある人により多くの負担を求める)・中立(個人や企業の選択を歪めない)・簡素の三原則を満たすことが求められています。これは、国税庁の高校生向け学習資料にも書かれていることです。
しかし、現状はとてもそうなっているとはいえません。色んな諸事情に配慮する必要があったり、税制の抜け道に対処したりするというのはわかりますが、それにしても、軽減税率しかり、今回の新NISA制度しかり、どんどん税制が複雑になっていく傾向があります。
改めて「公平・中立・簡素」の三原則に立ち返った、税制度の構築を期待しています✨