ゆーたんです♪
少し前のニュースにはなりますが、2019年10月の消費増税後、同月の小売業販売額が前年同月比で7.1%減となったことが報じられました。

各種報道は「台風など悪天候の影響もあるので、それほど心配する必要はない」という論調と「消費増税の影響は深刻だ」という論調に分かれています。
個人的には、消費増税をすればその月の販売額が落ち込むのはある意味当然であって、もう少し長い目で判断する必要があるかなと思っています。もっと長い目で見ると「やっぱりな…」という感じでして…今日は小売業販売額の推移から分析してみようと思います✨
小売業販売額の推移
小売業販売額についてのデータは、経済産業省の商業動態統計から取得できます。
小売業販売額は変動幅が大きい

小売業販売額について、商業動態統計の利用上の注意によれば、この額は消費税分を含んだ金額となっていて、店頭販売だけでなく、インターネット等による通信販売などの販売額も含まれているようです✨
肝心の販売額ですが、ガチャガチャしていますね。例年12月は小売業販売額が大きくなり、翌年の1月は少なくなるというように、季節による変動が大きいグラフになっています。
人口統計などは別ですが、小売業販売額など経済活動に関する統計は、前月比で数値を見ると、季節変動の影響を大きく受けてしまうため、通常、前年同月比(前年の同じ月との比較)で比較されることが多いです。
今までの消費増税時も小売業販売額は落ち込んでいる

ここからは、消費増税時にどれほど小売業販売額が落ち込んだのかについて見ていきますね。
2014年4月の数値は95.7(つまり2013年4月と比較して4.3%の減)、ちょうど消費税率5%→8%に引き上げられたときでした。そして、15年3月の数値は90.3となっていますが、これは前年に消費増税前の駆け込み需要が発生したためです。
ちなみに、グラフにはありませんが、消費税率が3%→5%となった、1997年4月の数値は93.6となっていて、消費増税前の駆け込み需要が発生した翌1998年3月の数値は86.7となっています。
もっとも、消費増税は、他の要因が一定の場合、家計の可処分所得(税金や社会保険料などを引いた手取り収入)を減少させます。消費額も減少するので、小売業販売額がある程度マイナスになることは想定内でしょう。
前回より税率の上げ幅が少なく、軽減税率やキャッシュレス還元など痛税感を緩和する措置がとられているわりには、マイナス幅が大きいような気もしますが、台風などの悪天候もありましたし、1か月単位ではどうしてもばらつきもありますので、この数字だけをもってして「消費増税の影響は深刻だ」とまでは判断できないかな…とは思います。
ただし、前回の消費増税のときも、一時的に小売業販売額は前年同月比で大きなマイナスになりましたが、グラフから、その後はすぐに回復していることがわかります。仮に、11月も大幅なマイナスになると危険水域となり、「消費増税で景気が悪化している」というのも説得力を帯びてきます💦
小売業販売額は20年以上横ばいで推移

もっとも、小売業販売額は1996年の146.3兆円をピークにして伸び悩んでいます。GDPは2016年度にようやく1997年度の高値を超えましたが、小売業販売額はリーマン・ショック以降、少しずつ伸びているものの、2018年も145.0兆円どまりで、1996年の高値を更新できていません。
バブル景気の崩壊後、1990年代から2000年代初頭にかけて、日本経済は長らく低迷し、「失われた10年」と呼ばれました。
2002年2月から2008年2月までの景気拡大期(73か月間)は戦後2番目の長さでいざなみ景気と呼ばれたりもしますが、輸出主導の好景気で、家計が景気回復の実感をあまり感じ取ることができなかったといわれています。
それは、この小売業販売額からも裏付けることができます。2002~08年の間で、小売業販売額はわずか2.8%(年率0.5%)しか増えていません。
それでも、日本経済は緩やかな回復基調にありましたが、リーマン・ショックで再び低迷し、「失われた20年」という言葉が徐々に定着してくるようになりました。さらに今後日本経済が停滞するようだと「失われた30年」という言葉が本格的に使われる日も近いかもしれません💦
なお、政府は2019年11月の月例経済報告で、景気が回復基調にあると判断しています。2012年2月より始まった景気回復基調は、いざなみ景気を超えて、戦後最長の景気回復になったとみられています✨

しかしながら、やはり好景気だったわりに、家計の景気回復の実感は乏しく、2012~18年の小売業販売額は5.4%の増(年率0.9%)にとどまっています。この背景には、企業の利益が拡大した割に給料が上がっていないこともあると思いますし、もちろん消費増税の影響も大きいとは思います。
あとがき
(Featured image by:Shutterstock)
「消費増税で景気が停滞しているか、そうでないか」という点がよく注目されていますが、より長い目で見てみると、小売業販売額はこの20年間ずっと横ばいであったという何とも残念な事実が浮かび上がります。
人口減少と少子高齢化が進むなか、税金・社会保険料の負担は増え続けています。例えば、「負担が多くても、充実した社会保障給付が受けられるので、老後が安心」というふうになれば、多少は消費も活発になり、小売業販売額も上昇すると思いますが、厳しい財政事情がそれを許しません。
現状は「充実した社会保障給付を少しずつ削減し、負担を増やす」方向になっています。その方向自体はやむを得ないかと思いますが、これでは将来への不安は解消されるはずもありませんし、消費も増えるはずがありません。
何といえばいいのでしょう…急速に貧しくはならないけれど、緩やかに貧しくなっていく、そしてこの先どんどん豊かになるイメージが持てない。今の日本経済はこんな感じでしょうか。だからこそ、私はこれからも米国株(アメリカ株)メインの投資を続けていきます✨