ブラックスワン〜預金封鎖・財産税は起こるか?それに対する備えは?〜

ゆーたんです。

日本の財政状況、円安・インフレの進行、少子高齢化と人口減少。「これからの日本経済は本当に大丈夫なの?」と考えている方もいることと思います(かくいう私もです)。


(Featured image by:Shutterstock)

日本では、第二次世界大戦で大規模な戦費支出がなされた結果、政府債務残高がGDP比で200%を超え、1946年に預金封鎖・強烈な財産税が実施されました。

2022年現在、債務残高対GDP比は250%を超えています。もちろん1946年当時とは日本が置かれている状況も全く異なりますし、過度な心配は不要と考えますが、それでも気になる人も多いと思います。

今日はこの件に関する私見を記事にできればと思います。

目次

預金封鎖・強烈な財産税の再来はあるのか?

私自身は、預金封鎖や強烈な財産税が行われる可能性はほぼないだろうと考えています。

まずは日本国憲法の規定にあります。そもそも29条では「財産権は、これを侵してはならない。」とあります。そして84条には「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と書かれています。つまり法律によることなく、勝手に税金を課すことは許されません

1946年当時の預金封鎖・強烈な財産税は、基本的人権が制限されていた大日本帝国憲法下だからこそできたのであって、今日の日本国憲法においては現実的ではないと考えています。

さらに、かりに政府が預金封鎖や強烈な資産税を検討することになれば、「実施前の段階で必ず情報が漏れる」と考えています。毎日新聞の記事によれば、1946年当時も4か月前に米紙が計画をすっぱ抜いて毎日新聞がその後追随しています。

預金封鎖はそこまで珍しいことではなく、アルゼンチン(2001年)やキプロス(2013年)などで行われています。ただ先進国では前例がありません。

日本は何だかんだで世界第3位の経済大国。1946年当時と異なり、国境を超えた資金移動は容易となり、金融取引も複雑になっています。それほどの経済規模の国が秘密裏に預金封鎖・強烈な財産税を行えるとは私には到底思えないのです。



とはいえ、負担増の流れは不可避

とはいっても、喜んでばかりはいられません。預金封鎖や強烈な財産税などのブラックスワンイベントは起きなくとも、負担増の流れは残念ながら避けられないでしょう。

消費増税・社会保険料の増税はもちろんのこと、福祉水準も切り下げ(例えば、医療費の自己負担割合増、年金の支給年齢引き上げ)を余儀なくされると考えます。

また人口減少に伴い、働き手も減っていきます。このまま「安い日本」が定着すれば、外国人労働者を確保することも難しくなるでしょう。今までの日本は、女性や高齢者への労働参加を促すことで対応してきましたが、いずれは限界が訪れます。供給制約が生じて、インフレ圧力となる可能性も考えなければなりません。

資産を持つ人が割を食う展開も

もちろん資産がある人も安泰とはいえません。

高齢者医療保険制度や介護制度については、預貯金や株式などの「資産」を多く持つ人に対して負担を増やすことが検討されています。

そのためには、マイナンバーの導入などにより、金融資産を把握することが重要です。預貯金口座すべてにマイナンバーを付番することで、金融資産に応じた「負担」が可能になるからですね。これは、新経済・財政再生計画 改革工程表2022に書かれていることです。

内閣府:新経済・財政再生計画 改革工程表2022

さすがに税金でこれをやると反発が大きいので、まずは社会保険料からという具合なのでしょう。

現在でも一生懸命お金を稼いでいる人ほど罰を受ける税制、例えば累進課税だったり、年金カットだったり…が存在します。ただこれからは、将来のために一生懸命お金を貯めてきた人、すなわちアリとキリギリスでいうと、アリ的な生き方をするほど罰を受ける税制が出てくることも覚悟しなければならないでしょう。

そして、金融所得課税の増税はそう遠くないうちに行われるだろうと考えています。

2024年からの新NISAでは生涯投資枠が1,800万円に拡充されました。これ自体は大変ありがたい話ですが、私個人としては「おいしい話には裏がある」と思わずにはいられません。老後資金は自分で稼いでねというメッセージはもちろんのこと、将来の金融所得課税の増税の可能性が高まったと考えています。

投資枠を最大限活用できるのは、口座開設者のうち10%にも満たないと思います。「NISA枠の上限を超えて投資している人々は富裕層」という名のもとに、特定口座分を25%、やがて30%に増税する可能性は否定できません。

もっと過激な方法としては、戦後の強烈な財産税までいかなくても、株式や債券などの金融資産に0.1〜1%程度の恒常的な財産税をかけることも考えられます。これが実現すれば、金融資産での収益を前提としたセミリタイア、FIREは崩壊必至です。

ただ、恒常的な財産税が課される可能性はかなり低いと考えていて、政治的なコストも大きいので、実際には年率数%のインフレで金融資産を目減りさせていくことが選択されるでしょう。まさに今の日本の金融政策もそんな感じになっています。

これら負担増の可能性を鑑みると、FIREして完全リタイアするというライフスタイルは今後日本においてますます非現実的になると考えています。仮にFIREを達成しても、事業を起こしたり、副業で生計をたてたりするなどして、ある程度の仕事を続けていく人が多くなるのではないでしょうか。



預金封鎖・強烈な財産税の対策

先に述べた通り、私個人としては、ある日突然、預金封鎖・強烈な財産税が来る可能性は想定していません。資産を持つ人に厳しい税制が導入される可能性は高いですが、緩やかなインフレ・円安であれば、十分に資産を守ることができると考えています。

ただし、万が一、円の信認が失われて、「インフレが加速し、円安が止まらなくなる」事態になった場合は要注意です。私たちが十分な準備をする前に、預金封鎖・強烈な財産税が決まってしまう可能性もゼロではありません。

その対策としては、以下のようなものがあげられるでしょう。

①外貨預金で保有する
②日本株、国内不動産を保有する
③外国株、外貨建MMFを保有する
④資産の一部を骨董品に変えておく
⑤海外オフショア口座を保有する
⑥海外不動産の現物を保有する
⑦法人をつくって事業を興す
⑧海外に移住する

預金封鎖や強烈な財産税は超法規的措置であり、どんな手段がとられるか予想はしにくいです。
ただ、ある程度の予想はできます。

A)不公平や抜け道が生じないように、課税ベースはできるだけ広くなるだろう
B)国内の法制度の影響を受けない金融機関に対しては、無理強いはできないだろう
C)企業活動を止めることはできないだろう

以下、詳しく見ていきます。

①は手っ取り早いですし、円安の備えとしては有効です。ただ、預金封鎖・強烈な財産税の前には無力です。例えば、強制的に不利なレートで円転させられる可能性もあります。また預金保険の対象外であり、金融機関が破綻した場合は帰ってこない可能性が高く、リスクが大きいです。

②③も微妙です。預金封鎖や強烈な財産税が行われるほどの事態で、株式や債券などの有価証券や投資信託が安全に守られるとは私には到底思えないのです。強制売却や没収、強烈な課税もあり得ます。富裕層は巨額の金融資産を保有していますし、金融資産については、残高把握もしやすいので、このレイヤーは狙い撃ちにされる可能性が高いと考えています。

④については、美術品や高級ワイン、腕時計などのほか、現代でしたらレアカードなどもあてはまるかもしれません。1 100%安全とはいえませんが、一つ一つのモノに対し、価格を設定して課税をしていくのは現実的ではないからです。ただし、貴金属など市場で価格が付けられているものに関しては、課税対象とされやすいでしょう。

⑤⑥については、日本の当局の管轄下にないので、強制売却や没収といった強硬手段がとられる確率は限りなく低いだろうと考えています。

ただし、海外オフショア口座や海外不動産であげた収益についても、きちんと確定申告をして税金を納める必要があります。また5000万を超える国外財産については申告が必要です(国外財産調書)。日本に住んでいる限り、国内財産と同様に、強烈な財産税からは逃れられないと考えています。

また海外オフショア口座に関してですが、非居住者の口座開設は年々規制が厳しくなっており、せっかく口座を開いても、サービス提供元の事情で、口座閉鎖を余儀なくされる可能性もあります。また何かトラブルが起きた際には、外国語でやり取りをしなければなりません。

⑦について、法人にある資産は、経済活動を止めないという観点から、預金封鎖の対象にはならないだろうと考えていますし、個人とは税制も変わってくるでしょう。ただ普通のサラリーマンが法人をつくるのはハードルが高いです。また、事業実態や規模などに応じて、預金封鎖や強烈な財産税の対象となる可能性は否定できません。

となると、結局のところは⑧の海外移住しかないのかもしれません。海外で生活の拠点をもち、資産も海外に移しておけば、万が一預金封鎖や財産税という事態になっても大丈夫だと思います。もちろん、住み慣れた国を離れるハードルは高いですし、移住先の国にだってカントリーリスクはありますが…

強烈な財産税が課されることになった場合、どの水準から課税されるかは読めませんが、おそらく資産3,000万円以下(マス層)の世帯は課税対象にならないと考えています。

これらの事情を勘案すると、資産の一定割合を外貨で保有しておく」ことが対策としては重要で、「資産の一部を骨董品に変えておく」「法人をつくって事業を興す」という選択肢が入るくらいでしょうか。

結局、日本国内に居住する限り、超法規的な措置である預金封鎖や強烈な財産税に対抗できる手段は限られていると私は考えています。今まで紹介してきたように、資産をさまざまな形に変えておくことで不測の事態にも対応しやすくはなるかもしれませんが、それが有効になるのは、数億円単位の資産を有する人になると思います。



おわりに

戦後の預金封鎖や強烈な財産税はブラックスワンイベントであり、起こる可能性は現状では極めて低いです。

万が一、預金封鎖や強烈な財産税が課されることになれば、国際的に批判も浴びるでしょうし、日本経済は二度と立ち直れなくなります。また外資の草刈り場にもなる(既にそうなっている面もありますが…)と思いますので、本当に最後の手段ですね。ただ残念ながら、これからの日本社会においては、さらなる負担増は避けられず、なかでも今後資産を有する人への負担増はほぼ確実だと考えています。

特にダメージが大きいのは、さまざまな選択肢を取ることができる5億円以上の「超富裕層」ではなく、コツコツと仕事を頑張ってお金を貯めてきた「アッパーマス層」〜「富裕層」あたりでしょうね。

私自身は、コツコツとお金を投資に回して何とか金融所得を積み重ねてきているので、金融所得だって努力の結晶と考えていますが、「汗水垂らして」得た労働所得こそが美徳であり、金融所得をよく思わない人は多く、「働かざる者食うべからず」という概念も根強いです。

ごめんなさい。自分で書いておきながらいうのもあれですが、何だかすごい暗い話になっちゃいましたね💧

でも楽観的に考えて裏切られてショックを受けるよりも、悲観的に考えて最悪の事態にならなくてよかったと思っておいたほうがショックは少ないと思うのです。

私にとって、積み上げてきた資産を奪われるというのは到底納得のいくものではありません。でもかりにそういう事態に陥ったとしても、命まで取られるわけじゃないし、(かりにセミリタイア・FIREしていたら)また働けばいいし、自分が磨いてきたスキルだったり、投資の経験だったりも奪われることはない。 いくらだってやり直せるはずと前向きに考えるしかないと思ってます…

いずれにせよ、財産税や預金封鎖は、自分のコントロールの及ばない話です。私にできることは、とにかく投資を続けて、将来の選択肢を増やすために、資産を少しでも積み上げていく。

そして人はいつまで生きていられるかわからない(それにブラックスワンイベントで資産がなくなるかもしれない)ので、今というこの時間にもお金を使っていく。
そのバランスが大事なのでしょうね✨

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