【SPYD】~配当金生活におすすめ?魅惑の高配当もハイリスクな高配当株式ETF〜

【更新情報】(2024/2/11)
2024年1月のリバランスを反映、記述を見直しました。

ゆーたんです♪

高配当株式ETFとして人気の高いSPYD

高配当株式ETF3きょうだい(VYM、HDV、SPYD)のなかで最も配当利回りが高いため、配当金生活によるセミリタイア・FIREを目指すうえでは、有力な選択肢になりえますが、その分リスクも高いです。

私自身は2019年3月以来SPYDを保有していて長らく主力のETFでした。しかし、23年6月に全部の株式を売却しました。その経験も踏まえて、以下、SPYDを分析します。

目次

SPYDってどんなETF?

SPYDSPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF、SPDR ポートフォリオ S&P 500 高配当株式 ETF)は、S&P 500の構成銘柄のなかで、配当利回り上位80銘柄を集めたETFです。

提供しているのは、米State Street(ステート・ストリート)社で、世界第3位の資産運用会社です。

SPYDの基本情報

銘柄数80
純資産額65.9億ドル
予想PER13.4倍
EPS成長率(予測)4.9%
配当利回り4.79%
増配率(5年平均、2019〜23)1.1%
トータルリターン(5年)※2022年末7.9%(S&P 500:15.7%)
経費率0.07%
設定日2015/10/21
※注記のないものは2月8日現在。State Street HPより作成

配当利回り上位80銘柄を集めただけあって、配当利回りは屈指の高さで、4%を下回ることは稀です。

えてして、配当利回りが高いETFというのは、経費率が0.4~0.5%くらいかかるのですが、SPYDはわずか0.07%にとどまっており、驚異的な低コストを実現しています。

各銘柄を「均等」に保有する点に特色

SPYDは、VYMのような時価総額に応じた割合ではなく、80銘柄がそれぞれ等しい割合で構成されている点に特色があります(もちろんその後の株価変動により構成割合は変化します)。

また、年2回のリバランス(1月・7月の最終営業日)により、株価の上昇や減配などで、利回りの低くなった銘柄は外れ、構成割合が各銘柄等しくなるように調整されます*。そのため、構成銘柄はその都度変わります。

*厳密には、6、12月最終営業日時点で配当利回り1〜64位までの銘柄が自動的に選択されます。残り16銘柄は、配当利回り上位65〜96位までのうち、リバランス前に含まれていた銘柄が優先的に選択され、それでも80銘柄に満たない場合、80銘柄に達するまで、配当利回り上位の株が順番に選択されます。この手順で決まった銘柄は、リバランス5日前の株価を基準に割り当てられるので、リバランス直後でも構成割合は均等にはなりません。



SPYDのセクター比率

※2024年2月8日現在(出典:State Street HPより作成)

SPYDのセクター比率は、不動産が26.1%、金融が20.7%、公益事業が16.5%と過半数を占めています。情報技術が3割近くを占めるS&P 500とは全く別物であることがわかりますね。

ただ、SPYDのセクター比率は半年に1回行われるリバランスで大きく変わります

不動産セクターは配当利回りが高いので、常に結構な比率を占めていますが、例えば、コロナショック前の2020年1月は、一般消費財セクターが17.5%と大きな割合を占めていました。他方、公益は9.1%で今よりも小さな割合にとどまっていました。

SPYD_Sector_202001

全体的な傾向としては、高配当株が多い金融や不動産、公益事業は、常に一定の割合が組み入れられています。一般消費財・サービスやエネルギーは組み入れ銘柄数が多いときと少ないときで差が激しいです。情報技術、ヘルスケア、資本財・サービスは基本的に組み入れ銘柄数が少ない傾向にあります。

高配当株ETFの代表格であるVYMと比較すると、セクターの偏りが大きく、リバランスのたびにセクター配分が大きく変わるので、クセのあるETFといえそうです。

SPYDに含まれる主な構成銘柄

セクターSPYDに含まれる主な構成銘柄
金融MS(モルガン・スタンレー)、C(シティ・グループ)、USB(U.S.バンコープ)
情報技術IBM
ヘルスケアABBV (アッヴィ)、PFE(ファイザー)、BMY(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ)、GILD(ギリアド・サイエンシズ)
生活必需品PM (フィリップ・モリス)、MO (アルトリア)、KHC(クラフト・ハインツ)、WBA(ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス)
資本財・サービスUPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)、MMM(3M)
一般消費財・サービスF(フォード)
エネルギーCVX(シェブロン)
公益事業SO(サザン)、DUK(デューク・エナジー)
素材DOW(ダウ)
コミュニケーション・サービスVZ(ベライゾン)、T(AT&T)
2024年2月8日時点

個別株でも保有している投資家の多い銘柄や、一般的に知名度の高い銘柄を挙げてみました。

しかし、JNJ(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、PG (P&G)、KO(コカ・コーラ)、MCD(マクドナルド)など、安定成長・安定配当を実現していて、投資家からの人気が高い「優良銘柄」は含まれていません

むしろ、知名度がそれほど高くない銘柄が多数です。

2024年1月の銘柄変動

外れた銘柄組み入れ銘柄
PSX(Phillips 66)※エネルギーBMY(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ)※ヘルスケア
AMGN(アムジェン)※ヘルスケアEXC(エクセロン)※公益事業
OGN(オルガノン)※ヘルスケアWEC(WECエナジーグループ)※公益事業
VFC(VF Corp.)※一般消費財・サービスUPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)※資本財・サービス
LNC(リンカーン・ナショナル)※金融K(Kellanova)※生活必需品
NTRS(ノーザン・トラスト)※金融CPT(カムデン・プロパティ・トラスト)※不動産
NRG(リライアント・エナジー)※公益事業EXR(エクストラ・スペース・ストレージ)※不動産
STX(シーゲイト・テクノロジー)※情報技術HST(ホスト・ホテルズ・アンド・リゾーツ)※不動産
PKG(パッケージング・コーポレーション・オブ・アメリカ)※素材MAA(ミッド・アメリカ・アパートメント・コミュニティーズ)※不動産

9銘柄が入れ替えとなっています。不動産セクターの追加が目立ちますね。

時価総額1,000億以上の大型銘柄では、UPS、BMYが組み入れられています。AMGNは肥満薬への期待から株価が上昇傾向で、1期で外れました。

SPYDのデメリット・リスク

SPYDはVYMよりも高配当に特化したETFであり、それだけにデメリットやリスクもあります。

全体的に株価が上昇しているアメリカ株式市場において、配当利回りが4%を超えるような高配当株というのは、えてして事業の成長性や将来性への疑問符などから、株式市場からはあまり評価されていない、いうなれば不人気銘柄が多く組み込まれています。

またSPYDは純粋に高配当利回りの株で構成されていますので、財務状況や配当の持続可能性などによるスクリーニングは行われていません。ということは、質の低い銘柄も組み入れることになります。

もっとも、減配で配当利回りが大幅に低下したり、時価総額が伸び悩んだりしてS&P 500の構成銘柄から外れれば、ほどなくして構成銘柄から外されることになります*。

つまり、時代に適応できない企業はいずれSPYDからも淘汰されていくため、過度に恐れる必要はないかなと考えています。

*ちなみに、S&P 500の構成銘柄から外れれば即座にインデックスから削除されます。また、配当が大幅削減・中止となった場合は、年2回のリバランスを待たずして、インデックス運用会社の裁量により、インデックスから削除される場合があります。



SPYDの配当金(分配金)推移

(注)2017年は0.313ドルのキャピタルゲイン(ファンド内での売却益)が投資家に分配されています。その金額を合計すると1.735ドルになります。

SPYDは年4回の配当で、配当月は、3・6・9・12月の下旬です。

配当金は年によってバラツキはありますが、5年平均(2019〜23)の増配率は+1.1%になっています。

SPYDの配当金減少をどう考えるか?

SPYDの配当金は2022年こそ増加に転じましたが、2020、21年と2年連続で減少しているので、「本当に大丈夫なの?」と心配される投資家さんもいらっしゃると思います。

もっともSPYDに限らず、ETFの配当金(分配金)は不安定です。

ETFにおける発行済の株式数は毎日変動しています。配当金が入ってくる時期もバラバラです。ETFの配当金は、保有する資産から入ってくる配当金の合計を、発行済株式数で割って算出しています。極端な話、配当落ち時に発行済株式数が前日の倍になれば、配当金は半分になりますし、その逆もまた然りです。

そのため、特にSPYDのように定期的なリバランスが行われるETFでは、銘柄入れ替えや株式数の変動によっては、想定よりも配当金が減ったり、増えたりすることも頻繁に起こり得ます。2023年の配当金は前年比で減少となりましたが、2016〜18年頃と比較すると増えていますから、過度の心配はいらないと思います。



SPYDの株価推移&トータルリターン

SPYDの株価推移(買い時はいつ?)

株価は2020年のコロナショックを除けば、35〜45ドルの範囲で横ばいで推移していますね。

値動きを見て分かる通り、キャピタルゲインよりもインカムゲインを重視すべきETFですが、コロナショックのような大きな経済ショックで大きく買いを入れることができれば、キャピタルゲインも十分に狙えるETFとなっています。

なお、S&P 500と比較すると、SPYDは①金融や不動産といったシクリカルセクター(景気変動で業績が大きく左右される)の割合が大きいこと、②「質の低い銘柄」を多く組み入れる傾向があること、などの理由から大きな経済ショックが起こった場合、S&P 500よりも大きく値を下げる可能性が高いです。

できごとS&P 500SPYD
SVB(シリコンバレー銀行)破綻(2023年)-9.2%-18.6%
コロナショック(2020年)-35.4%-48.0%
リーマンショック(2008年)-56.8%約-73%
※日中高値からの最大下落率。2008年のSPYDはバックテストの結果より

そのため、SPYDについては毎月定期購入をしていくというよりも、「〇〇ショック」など、株価が大きく下げたタイミングでスポット購入をする、もしくは配当再投資をすることでリターンの向上が狙えるかと思います。

どちらかといえば上級者向けで、高配当株式ETFを毎月購入するならやっぱり鉄板はVYMでしょうか。

SPYDのトータルリターン

2018年頃まではS&P 500のパフォーマンスとほぼ互角だったのですが、19年の上昇相場でやや差がついています。

2020年のコロナショックの時は、小売などの一般消費財、およびエネルギーセクターの構成割合が高く、S&P 500を大きくアンダーパフォームしました。その後の回復はめざましく、2021・22年とS&P 500を2年連続でアウトパフォームしています。

ただ、2023年はハイテク株が急反発し、S&P 500の+26.3%に対し、SPYDが+3.9%と大きく水を開けられてしまっています。

過去32年ではS&P 500を上回る!

SPYDは設定されてまだ9年程度のETFであるため、長期の実績を計測するためには、元の指数(ベンチマーク)のパフォーマンスを見る必要があります。

この指数自体がリリースされたのは2015/9/21なのですが、指数の基準値自体は1991年1月18日=1000として値が算出されています。

S&P 500 High Dividend Index -S&P High Dividend Indices Methodology-

トータルリターンの値は2024年2月9日時点で32,288.1なので、設定値から比較して32倍になります。一方、S&P 500のトータルリターンの値は1991年1月18日時点が370.28、2024年2月9日現在が10,897.61ですから、同期間で比較すると29.4倍になります。

つまり、過去30年のなかで、SPYDに連動するインデックスは、S&P 500を上回るパフォーマンスをあげてきたことが分かります✨

直近16年ではS&P 500を下回る…

ただこのことは将来にわたってSPYDがS&P 500よりも好調なパフォーマンスをあげることを保証するものではありません。それに、トータルリターンは期間の切り取り方次第でいかようにも変わります

SPYDについても、2007年4月以降のトータルリターンをグラフ化すると、S&P 500には差をつけられてしまっています。

 VYM・HDVとの比較

※税金や手数料は考慮しない

米国高配当株式ETFとして代表的なVYMHDVとのトータルリターンを比較してみました。HDVとはほぼ同等のリターンとなっていて、VYMには負けてしまっていますね。



SPYDの配当利回り推移

※Weekly Chart

分配金(配当金)がやや不安定なので、参考程度にしていただければと思いますが、SPYDの配当利回りは3.5〜7.9%の範囲内で推移しています。SPYDの配当利回りは平均すると4.53%になっています。

まとめ

S&P 500の配当利回り上位80銘柄にほぼ等しい割合で投資。不動産セクターの割合が多めで、知名度の高くない銘柄への投資割合が大きい。

  • 配当利回りは4%を上回ることが多く、高配当株式ETFのなかでも最高水準
  • 経費率も0.07%と低く、高い配当利回りと低コストを両立
  • 銘柄入れ替えで、大きく減配した銘柄やS&P 500から外れた銘柄は削除される
  • 過去30年以上の歴史でみて、S&P 500を上回るパフォーマンス
  • 事業の成長性や将来性への疑問符などから、株価が低迷している不人気銘柄や質の低い銘柄が多い
  • セクター割合がS&P 500とは大きく異なるため、上昇相場でも想定通りのリターンが得られない可能性もある
  • コロナショック時はほぼ半値になるなど、暴落相場ではS&P 500以上に株価が大きく下落する可能性がある

SPYDの最大のメリットは、配当利回りの高さに尽きます。

それまで米国高配当株式ETFの定番と言えばVYMでしたが、VYMには配当利回りが1%台後半の銘柄も含まれ、配当利回りは2%台後半〜3%台前半で推移しています。

米国高配当株式ETFとしては、HDVも魅力あるETFです。ただこちらのETFも配当利回りは3%を少し上回る程度です。

「もう少し配当利回りの高い銘柄だけを集めたETFがあれば」というなかで、SPYDというETFが出てきました。それでいて経費率0.07%というのは本当に魅力的です。

高配当株投資や配当金生活を実践するうえで一番怖いのが減配です。特にSPYDは高配当の銘柄ばかりを集めていて、より心配な面はありますが、そもそもS&P 500に名を連ねる企業ではありますし、大幅な減配があった企業はインデックスから排除されるので、傷も小さくて済みます。

ただし、大きな経済ショックが起こった場合、S&P 500よりも大きく値を下げる可能性が高く、VYMと比較するとハイリスクなETFである点は否めません。

コロナショックやリーマンショックの暴落時でも保有し続けられるか、買い増しできるかが問われます。高配当ETFのなかでもピーキーな性質をもつETFといえそうです。

情報開示:この記事は私自身が書いたものであり、私の意見を表しています。私はこの記事から報酬を受け取っておらず、この記事で言及されている会社と直接のビジネス関係はありません。

(Featured image by:Adobe Stock)

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