ゆーたんです。
世界最大のヘルスケア企業である、CVSヘルスの銘柄分析です♪
CVSヘルスってどんな会社?
CVSヘルス(CVS Health、ティッカー:CVS)は、ロード・アイランド州のウーンソケットに本社を置き、ドラッグストアをはじめ、各種医療サービスの提供や健康保険事業など、幅広くヘルスケア事業を展開する企業です。
日本での知名度は低いと思われますが、2022年の収益は3,224億ドルとなっていて、アメリカ国内ではウォルマート、アマゾン、アップルに次ぐ4位となっていて、収益だけで見れば、世界最大のヘルスケア企業です(なお時価総額最大の企業は、2023年3月末現在ユナイテッドヘルスとなっています)。

CVSは1966年に設立された新しい企業です(ちなみにCVSはConsumer Value Storesの略とのことです)。もともと薬局やアパレルなど小売の持株会社メルビル(Melville)社の傘下にありましたが、1996年の大規模再編で解体され、コア事業の薬局事業がCVSとして引き継がれました。
2014年にはタバコの販売を終了するとともに、社名をCVSヘルスに変更しています。2018年には医療保険大手エトナ社(Atena)を約700億ドルという巨額で買収し、統合ヘルスケア企業としての道を歩み始めました。

その後も買収攻勢は続いていて、22年9月には在宅医療サービス会社のシグニファイ・ヘルス(Signify Health、ティッカー:SGFY)の買収に合意しました。
23年には、高齢者・障害者向け医療保険であるメディケア給付対象者向けのプライマリーケアセンターを運営するオークストリート・ヘルス(Oak Street Health、ティッカー:OSH)の買収に合意していて、小売薬局からヘルスケアサービス企業への移行を加速しています。
CVSヘルスの基本情報
セクター | ヘルスケア(ヘルスケアサービス) |
株価 | 74.31 |
PER(2023年予想EPSベース) | 8.4 |
EPS成長率(2018〜24)※23年以降は予想 | 4.4% |
配当 | $2.42(四半期あたり$0.605) |
配当利回り | 3.26% |
増配年数 | 2年(1997年以降減配なし) |
S&P格付け | BBB |
CVSヘルスの業績
収益、営業利益、純利益

収益は年10%を超えるペースで成長しています。2018年にエトナ社の買収を完了したことで、翌19年の収益が大きく増加しています。他方、営業利益率は芳しくないですが、事業の性質上致し方がないでしょうか。
CVSの部門別収益・営業利益(2022年)
部門別収益の内訳

部門別営業利益の内訳

事業は大きく三つの分野に分かれています。
収益で最大の割合を占めているのが、薬局サービスです。薬局給付管理(PBM)が中核で、CVSケアマーク社(2007年に統合)によって担われています。
ざっくりといえば、製薬会社や病院などさまざまな利害関係者をなかだちする形で事業を運営しており、患者に対しては、薬剤に関する情報提供、処方箋の注文受付、薬剤への支出管理などを担っています。2021年のPBMシェアは33%で第1位です。
小売/LTC(長期ケア)は、薬や健康食品などを販売しており、私たちがイメージしているドラッグストアの事業に近いですね。
CVS/Pharmacyブランドとして運営されています。500万人の消費者が毎日CVSの店舗を訪れており、アメリカ国民の85%がCVSから10マイル(約16km)以内に居住しているとのことです。
ヘルスケア・ベネフィットは、健康保険が中核で、エトナ社(2018年に買収)によって担われています。その他、ヘルスケア関連サービスもこのセグメントに含まれています。
なお、これら3事業の収益成長率、調整後営業利益率は以下のようになっています。どのセグメントも安定して成長していますね✨
- 薬局サービス:収益成長率+10.6%、調整後営業利益率4.3%
- 小売/LTC:収益成長率+6.5%、調整後営業利益率6.3%
- ヘルスケア・ベネフィット:収益成長率+11.2%、調整後営業利益率6.5%
EPS、ROE

会社発表のAdjusted EPSで見てみると、5年平均(2018〜22年)で+5.3%、10年平均(2013〜22年)では+9.0%の伸びとなっています。
横ばいとなっている年もありますが、基本的には右肩上がりで成長していますね✨
Debt/Equity

エトナ社の買収で大きく増加したDebt/Equity(負債資本倍率)は着実に低下してきています。
もっとも債務の額自体は大きく、長期負債は500億ドルを超えていて、フリーCFの4年分弱に相当する金額です。買収戦略自体は歓迎すべきことですが、債務水準の圧縮も望まれますね。
キャッシュフロー(CF)

収益の高まりを反映して、営業CFもフリーCFも順調に伸びていますね✨
CVSヘルスの株主還元状況(配当・自社株買い)
CVSヘルスの配当・配当性向・増配率

エトナ社の買収に伴い、負債が大幅に増加したため、2017〜21年の間、配当金は据え置きとなっていました。買収に伴う債務を一定程度消化したこともあり、2022年以降、10%の増配が再開されています。
過去には1998〜2003年の間も配当水準が据え置かれていたことがありましたが、現在のCVSに引き継がれてから(すなわち1997年以降)は減配は行われていません。HPでは配当履歴を全て公開しているので、その点は好印象ですね。

増配率は上記のようになっています。シグニファイ・ヘルスとオークストリートヘルスの立て続けの買収が今後の配当方針にどう影響するかは気がかりですね。
CVSヘルスの自社株買いを含めた株主還元状況

エトナ社の買収により、2018〜21年と自社株買いを停止していましたが、22年は再度自社株買いを復活しています。どちらかというと、配当よりも自社株買いで株主に還元する意向が強いように感じますね。
CVSヘルスの株価・トータルリターン
株価推移(1997〜)

2015年につけた高値をいまだに超えられていないですね(´・ω・`)
2010年代後半のCVSヘルスの株価は低迷を続けました。主な理由としては以下が挙げられそうです。
- エトナ社の買収に伴う巨額債務の引き受けとそれに伴う増配凍結
- 医療用麻薬のオピオイドを巡る訴訟
- Amazonのヘルスケア事業参入に対する業界の混乱懸念
潮目が変わったのは2021年ですね。2020年の新型コロナウイルスの流行で、ワクチン接種の需要が大幅に増加したことで、接種場所や検査場所として、身近な薬局であるCVSは存在感を示し、業績も堅調に推移しました。
ちょうど2021年から増配を再開したことも好感されましたし、オピオイド訴訟も和解に向かいつつありました(22年に和解案が合意されています)。

そして、Amazonのヘルスケア事業参入に関しても一時期ほどは騒がれなくなった印象です。2018年のピルパックを買収し、処方薬市場に参入したことは薬局業界に大きな衝撃を与えました。19年には法人向け医療サービスの「Amazon Care」を始めましたが、こちらは22年に撤退しています。

もっとも、Amazonもヘルスケアへの野心を捨てたわけでは全くなく、プライマリケアを担うワンメディカル社を買収しています。常にヘルスケア市場参入の機会は伺っていると考えて差し支えないかと思います。

好調だったCVSの株価ですが、2022年末付近から株価はズルズルと下がり始め、3月末時点で株価は70ドル台に逆戻りしています。
ヘルスケアセクター全体から資金が流出しているのもありますが、企業独自の要因としては、①相次ぐ買収による債務増加・配当方針への懸念、②メディケア健康保険プランの評価格下げによる収益減が主な要因でしょうか。
トータルリターン(SPY、1993/1〜)

1993年以降のトータルリターンではSPYに負けてしまっています。2016年以降の株価低迷が痛いですね💧
まとめ
- 収益ベースで世界最大のヘルスケア企業で、収益は年10%を超えるペースで成長中
- 買収攻勢でヘルスケアの幅広い事業に進出しており、事業の多角化を図っている
- 2023年予想PERは8倍台とバリュエーションは割安感強い
- 配当は1997年以降減配がなく、配当も安全にカバーされている
- 事業内容的に利益率は高くなく、大幅の向上は見込めない。各種訴訟リスクとそれによる負担増に注意が必要
- 連続増配の実績は2年と短く、買収による債務増加などを理由に増配が凍結される懸念
- Amazonをはじめ、異業種企業がヘルスケア事業に参入してくることで、ビジネスモデルが崩れるリスク
私はCVSヘルスを保有しています。
小売薬局としては、NYダウ工業30種企業でWBA(ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス)もあります(私も銘柄分析記事を2019年に書いています)が、私はヘルスケアサービス企業への意向を進めているCVSの経営方針に共感しており、ポジションを多めに保有しています。

AmazonやWalmartなど小売企業がヘルスケア事業に本格参入することで、特に薬局業界については、ビジネスモデルが崩れないかどうか、不安は残るのは事実です。
とはいえ、ヘルスケア分野は、アメリカ国内での高齢化の進行に伴い、基本的にパイが拡大していく業界であると考えていますし、CVSも小売薬局だけでなく、ヘルスケアサービスを提供する企業として事業内容を組み替えてきています。将来の収益成長と増配を期待して持ち続けられたらなと✨
情報開示:この記事は私自身が書いたものであり、私の意見を表しています。私はこの記事から報酬を受け取っておらず、この記事で言及されている会社と直接のビジネス関係はありません。