ゆーたんです。大手半導体メーカー、テキサス・インスツルメンツの銘柄分析です。
テキサス・インスツルメンツ(TI)ってどんな会社?
テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments Incorporated、ティッカー:TXN)は、アナログ半導体や、組み込みプロセッサ(システムの基本機能を制御)などを製造するアメリカの大手半導体メーカーです。公式サイトではTIと略語表記もしていますね。
アナログ半導体は、光や音、温度など、絶えず変化している情報をコンピュータで処理できるようにする役割を果たした半導体で、スマートフォンや自動車などに広く搭載され、私たちの生活に欠かせません。2021年の市場シェアは19%と、アナログ半導体ではトップシェアを誇り、2位に1.5倍近くの差をつけています。
TIの歴史は1930年にまで遡ります。ジョージア工科大学の卒業生によって設立され、当初は石油探査用の機器を開発していました。
現在の会社名になったのは1951年です。54年には世界初のシリコン製トランジスタ(電流を流したり切ったりするスイッチングや、電気信号の増幅ができる半導体素子)を開発しています。
2022年の収益は200億ドル。テキサス州のダラスに本社があり、3.3万人の従業員がいます。
テキサス・インスツルメンツの基本情報
セクター | 情報技術(半導体) |
株価 | 176.76 |
2023年予想PER | 23.6倍 |
EPS成長率(2018〜25)※23年〜は予想 | 6.5% |
配当 | $4.96(四半期あたり$1.24) |
配当利回り | 2.81% |
連続増配 | 19年(2004年以降連続増配) |
S&P格付け | A+ |
テキサス・インスツルメンツの業績
テキサス・インスツルメンツの収益・営業利益・純利益
収益は綺麗な右肩上がりとなっていますね。5年平均の収益成長率は+6.1%です。
2022年の収益をマーケット別にみると、産業向けが40%、自動車向けが25%、パーソナル電子機器向けが20%、通信設備向けが7%、エンタープライズシステム(企業向け情報システム全般)が6%です。
2013年時点では、産業向けが30%、自動車向けが12%でしたから、この2セグメントが大きく伸びています。特に自動車向けではEV(電気自動車)が、エンジン車よりも多く半導体デバイスを搭載することになるので、EVが新たな成長分野として期待できます。
またセグメント別にみると、アナログ半導体が77%、組み込みプロセッサが16%、その他が7%となっています。
収益は今後も成長が期待できると思いますが、2023年はやや苦しそうです。というのも、半導体業界の需要減少のあおりを受けて、2023年第1四半期は、自動車向け以外が軒並みマイナスで、11%の収益減となりました。
あと目を引くのが営業利益率です。こちらは年を追うごとに右肩上がりとなっていて、2022年は50%に達しています。同業他社をみてもこれだけの営業利益率を叩き出している会社はそう多くありません。
テキサス・インスツルメンツのEPS・BPS・ROE
EPS(1株あたり純利益)、BPS(1株あたり純資産)ともに右肩上がりになっています。5年平均のEPS成長率は+13.9%と2桁成長です。
債務残高もよくコントロールされており、信用格付けもA+と安定しています。
しかし、2023年は先ほど述べたように半導体需要の減速により、EPSは前年度比で2割強のマイナス成長が見込まれています。
テキサス・インスツルメンツのキャッシュフロー
営業CF、フリーCFともに増加傾向にあることがわかりますね。テキサス・インスツルメンツは、1株あたりのフリーCFの増加にコミットしていて、公式HPの投資家情報では2004年以来、1株あたりのフリーCFが年間11%の成長率であることがアピールされています。
営業CFマージンも40%を超えており、かなりの高水準です。収益に占めるキャッシュフロー比率はS&P 500社の上位16%に位置しています。
2021、22年と設備投資が増えていますが、これは半導体工場を増設することによるものと思われます。
テキサス・インスツルメンツの株主還元状況(配当・自社株買い)
テキサス・インスツルメンツの配当、配当性向
テキサス・インスツルメンツが最初の配当を宣言したのは1962年にまで遡ります。
2004年以降連続増配となっていて、2004年以来の成長率は年間25%と強烈、この10年間でみても配当は4倍以上になりました。(2004年より以前の配当履歴は公式HPより確認できませんでした💧)
配当性向は50〜60%程度をキープしています。業績の伸びを伴った増配であることがわかりますね。
テキサス・インスツルメンツは、配当支払い基準をフリーCFの40〜80%を目標としているので、フリーCFベースの配当性向もグラフ化しました。2021、22年度とフリーCFでみた配当性向が上昇傾向にありますが、先に触れたように、設備投資の金額を増やしていることによるものなので、きちんと未来への投資もしているわけですから、問題ないと思います✨
テキサス・インスツルメンツの増配率
テキサス・インスツルメンツは毎年11月頃に増配を発表します。増配率は安定して2桁をキープしているのですが、直近の配当の伸びは$1.15→$1.24(+7.8%)と鈍化しています(年度途中で増配するため、上のグラフとは数値が異なります)。
2023年のEPSがマイナス成長であることを鑑みると、23年度途中の増配率は5〜8%程度になりそうでしょうか。
テキサス・インスツルメンツの自社株買いを含めた株主還元状況
2021年を除いて自社株買いも結構な金額で行っており、バランスよく株主還元がなされている印象です。
公式HPの投資家IRでは、2004年以来、発行済株数の47%を償却したことをアピールしています。毎年3.5%程度を償却している計算になりますね✨
テキサス・インスツルメンツの株価・トータルリターンの推移
テキサス・インスツルメンツの株価推移
2021年以降は160〜200ドル圏内でのレンジで推移しています。
テキサス・インスツルメンツのトータルリターン(直近5年)
直近5年のトータルリターンはS&P 500をわずかに上回っています。
まとめ
- アナログ半導体で世界トップシェア。特に自動車向けが大きく伸びており、EV(電気自動車)が成長分野として期待。営業利益率も驚異の50%超え。
- 債務水準はよく管理されており、信用格付けはA+で安定
- 2004年以降連続増配中。自社株買いにも積極的で2004年からの18年間で株数を47%削減
- 半導体需要は減速しており、2023年の収益・EPSはマイナス成長が見込まれる。バリュエーション的に割安感はない
私はテキサス・インスツルメンツ(TXN)を保有しています。
2022年に投資を開始しました。4,900ドルを投じており、22年単体では医療機器のMDT(メドトロニック)につぐ額を投資しています。
AVGO(ブロードコム)の株価が急伸していまったいま、半導体セクターで利回りが2%後半なのは、QCOM(クアルコム)とTXN(テキサス・インスツルメンツ)くらいです。
バリュエーション的に割安感はそこまででもないですし、今日のAIバブルの恩恵を受けられる企業ではありません。それでも半導体の需要は今後も増え続けるだろうし、厚い株主還元で株主に報いてくれるものと信じています✨
情報開示:この記事は私自身が書いたものであり、私の意見を表しています。私はこの記事から報酬を受け取っておらず、この記事で言及されている会社と直接のビジネス関係はありません。