米国通信大手を襲う鉛ケーブルの問題についての所感

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米国通信大手の株価は下げ止まらず

ゆーたんです。

米国通信大手のベライゾンVerizon、ティッカー:VZ)、AT&T(ティッカー:T)。

高配当株としても人気のある2社ですが、直近1年で株価は30%以上下落しており、S&P 500に大差をつけられています。

もともと通信業界は設備投資額が大きく、債務残高も巨額になりがちです(ベライゾンのS&P信用格付けはBBB+、AT&TはBBBとなっています)。

巨額の債務残高を抱えていることから、金利上昇で利払費が増加し、キャッシュフローが圧迫、成長の見通しが低下する可能性が懸念されていました。

2023年6月にはアマゾンがプライム会員向けに安価な通信サービスを提供しようとしているという報道もありましたね。

そして、通信株ホルダーに追い打ちをかける出来事が7月に起こりました。米国通信大手が有毒な鉛で覆われたケーブルをその危険性を知りながら放置していたことWSJ(ウォール・ストリート・ジャナール)で報じられたのです。

この報道を受けて、株価は急落。さらにアナリストがレーティングを引き下げたり、一部メディアでその損害額が見積もられたりしたことなどにより、株価は過去1か月で10%を超える下げとなっています。

米国通信大手の配当利回りは8%超!

2023/7/18現在のベライゾンの利回りは8.09%、AT&Tの利回りは8.25%となっています。

AT&TはS&P 500銘柄のなかで2番目の配当利回り、ベライゾンは3番目となっています(1位が大手たばこメーカーのアルトリアで8.28%です)。

配当利回り8%超はもはや「超」高配当株とも呼ぶべき水準ですね。S&P 500銘柄でもこの3銘柄しかなく、配当利回り6%超まで広げても10銘柄程度しかありません。

ただこうした「超」高配当株は、もちろん理由があって売り込まれているわけでして…配当が持続可能で安定的に推移するのなら、配当利回りが7〜8%になることはそうそうありません。

すなわち、ある程度の水準を超えた、配当利回りはリスクの高さを表しているともいえます。ということは、ベライゾンやAT&T社は、S&P 500の配当を支払う企業において、もっともハイリスクな投資と認識されているといっても過言ではないですね💧



WSJの報道に対し、業界団体はどう反応しているか?

もちろん、WSJの報道を受けて、通信業界も黙っているわけにはいきません。業界団体(USテレコム)が出している声明を見てみたいと思います。

要点は以下の通りです。

  • アメリカの人々の血中鉛濃度は2015/16年時点で1970年比で90%以上低下している。
  • 鉛は土壌や堆積物、水中にも含まれ、車のバッテリーなどさまざまな製品の製造工程にも含まれている。通信ケーブルが鉛汚染の主な原因または公衆衛生問題の原因であるという証拠がない。規制当局も特定していない。
  • WSJが報告した内容を確認できていない。なぜならWSJが導き出した結論の根拠となるデータを知り得ていないからだ。

もちろん業界団体なので、その主張は割り引いて考える必要があるとは思いますが、規制当局も鉛ケーブルの存在を公衆衛生上の課題として認識してこなかったのは事実のようですね。

ただ今回のWSJの報道を受けて、規制当局が動き出したり、訴訟の提起が行われたりというのは十分に想定されうるのが怖いところです。

個別株のリスクはETFでも完全に消すことはできない

米国通信大手は時価総額も大きいため、たとえホルダーでなくとも、高配当ETFに投資している方であれば、それなりの割合をベライゾンとAT&Tに投資していることになります。

その投資割合は、HDVで約5.8%、SPYDは約2.1%、VYMは約1.7%とみられています(2023/7/17時点)。

ETFを保有しているからといっても、ETFも結局は個別株の集合体なので、個別株特有の問題を完全に無視できるわけではないのです。ただ「パッケージ化」されているから、見えにくくなっているだけで。

特にVYMのようにある程度時価総額でウェイトをかけるならまだしも、HDVのように銘柄のスクリーニングが行われる場合は、結構な保有割合になっていることも少なくないので、注意が必要ですね。



米国通信業界への投資をどう考えるか?

ベライゾンもAT&Tも株価は深く過小評価されていると信じていますが、もともと成長見通しはそこまで強くないので…難しい投資判断にはなりますね。

今回の鉛ケーブル問題については、強気なアナリストと弱気なアナリストが混在しており、正直蓋を開けてみないとわからない部分もあります。

そして、現時点で鉛ケーブル問題は、まだWSJの報道にとどまっており、人々の訴訟や規制当局の動きは本格的にはみられていません(もちろん将来的に起こる可能性があります)。

ただ私個人は、鉛汚染は別に通信ケーブルだけに限らず、通信会社にばかり責任を負わせるのはどうなんだろう(そもそも規制当局にも責任がある?)と思っていまして、ベライゾンやAT&Tに対し、企業の存続が危うくなるほどの罰金や原状回復費用が課されるとは現時点では考えていません

他方、投資家は何よりも不確実性を嫌います

戦闘用耳栓問題のスリーエム(3M、ティッカー:MMM)などで嫌というほど感じました。当面株価の上値は重くなりそうで、配当を収集しつつ、数年かけて20〜30%のアップサイドを期待していく投資スタイルになりそうです。

ちなみに現在のポートフォリオ(YUHID)に占める通信大手2社の割合は1.9%です。

深追いは禁物ですが、S&P 500が過去最高値から5%程度の位置にあり、魅力的なバリュエーションの銘柄が少なくなってきているので、私自身は、様子を見つつ、段階的に下げていくなら買い増していこうかなと考えています。(配当の一貫性の観点からベライゾンの買い増しを優先できればと)

Financial Statement_image

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