ADR(米国預託証券)投資の魅力とリスクを考える〜高配当ADR銘柄リスト付き〜

【更新情報】(2023/3/26)
ADR銘柄リストを更新、各種記述を見直しました。

ゆーたんです♪

このブログは米国株(アメリカ株)への長期投資をメインにしていますが、英国株(イギリス株)やインド株も保有しています。

これらの株式は、本来であれば、現地の証券取引所に上場している株式を買う必要がありますが、一部の銘柄はアメリカの証券取引所(NYSE、NASDAQ)にも上場しており、米国株と同じ感覚で購入することができます。これを可能にしているのがADR(米国預託証券)というしくみです。

今日はこのADRについて扱うとともに、おすすめの高配当株も紹介しようと思います✨

目次

そもそもADRって何?

ADR_image
(Feature Imaged By:Shutter Stock)

ADRとは、American Depositary Receiptの略語であり、日本語では米国預託証券と訳されます。

具体的なしくみですが、現地の証券取引所に上場している株式を、預託銀行(JPモルガン、シティバンク、バンク・オブ・ニューヨークメロン、ドイツ銀行)が購入・保管します。

そして、その株式の代わりとなる証券(預託証券)をアメリカで発行し、その証券をアメリカの証券取引所に上場させることで、外国株でありながら、米国株のように取り引きができるようになっています。

企業にとっては、ADRを発行することで、知名度の向上や多様な資金調達が可能になるというメリットがあります✨



ADRのメリット

配当に対する源泉徴収税がゼロの場合がある

米国株投資のデメリットとして、よくあげられる点に源泉徴収税がかかるということがあります。

具体的には、配当に対して一律10%の源泉徴収税率がかかり、その後さらに日本で20.315%の税金が課されます。

アメリカで徴収された10%分は外国税額控除で取り戻すことができますが、所得税をある程度納めていなければ全額取り戻すことが困難です。かりに所得税を全く納めていなければ取り戻すことはできません。特にセミリタイア・アーリーリタイアの場合は、所得税をあまり納めない生活になりますので、多くは取り戻せないと考えてよいでしょう。

また、NISA口座で投資している場合も、外国源泉税は一切取り戻すことができません

しかし、なかには、配当に対する源泉徴収税率がゼロの国があります。以下の表は、主な国の配当に対する源泉徴収税率です。

スイス*35%
アイルランド25%
カナダ、オランダ15%
アメリカ、中国、インド10%
イギリス、オーストラリア0%
*還付請求で25%を取り戻すこと自体は可能。ただし手続きは煩雑(出典:ジェトロホームページ等より作成)

源泉徴収税がかからない国の代表格はイギリスですね。著名な企業がADRとして多く上場しており、投資対象としても魅力的な企業が数多く存在します✨

直接の投資が困難な国にも投資できる

例えば、私はインド株としてIT大手のGSK(グラクソ・スミス・クライン)を保有していますが、インド株は、外国人投資家の株保有が厳しく規制されていて、現地の証券口座を保有しているなどの事情がない限り、直接の投資ができません。

またスイス株は大手ネット証券では取り扱いがありませんので、対面の証券会社で取引をする必要がありますが、大手製薬会社のNVS(ノバルティス)はNYSE市場にADRとして上場しているため、大手ネット証券でも取引が可能です。

直接の投資が難しい場合でも、ADRとして上場していれば、米国株扱いで容易に買い付けることができます。このほか、イスラエルやブラジル、ロシアなど、通常では直接の投資が難しい国の株式にも投資できるのがADRの魅力です(ただし、数はそれほど多くないので過度の期待は禁物です)。

ADRのデメリット

管理手数料がかかるケースがある

少額なので、気にする必要はないかなとも思いますが、預託証券の管理手数料として1株あたり0.005ドル~0.01ドル程度が、配当金支払いのたびに徴収される場合があります。だいたい配当金額の1%程度になりますでしょうか。。

管理手数料は、企業によってまちまちです。私の保有銘柄だとSHEL(シェル)は0ですが、BPやBTI(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)、UL(ユニリーバ)は年間で$0.02、NGG(ナショナルグリッド)は年間で$0.03徴収されているようです。

上場廃止となり、強制的に現金化される可能性がある

企業自体が倒産しなくても、ADRとしての上場を廃止する可能性はあります。高配当株として有名だったウエストパック銀行が2022年1月末にADR上場廃止を決めました。

ADRとして上場することにもコストがかかるため、ADR上場廃止はそれほど珍しい話ではありません。上場廃止になった場合、基本的には売却されて現金として吐き出される形になると思われます。場合によっては、強制的な損失確定となってしまうケースもあるので、注意が必要です。



高配当のADR銘柄は?おすすめはあるの?

配当利回りが比較的高いADR銘柄を紹介しますね。源泉徴収税がゼロのイギリス株を中心に紹介していますが、他の国の株も一部リストに載せています✨

銘柄セクター配当利回り備考・リスク要因
VOD(ボーダフォン)通信サービス8.84%世界有数の電気通信サービスを展開する企業。2019年に4割減配。
BTI(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)生活必需品8.01%世界有数のグローバルたばこ会社。ポンドベースでは25年以上連続増配が続くが、たばこ事業の将来性に不安残る。
HSBC金融4.84%アジアに強みを持つ、世界的なメガバンク。コロナショックで無配となっていたが、2021年に復配。
NGG(ナショナル・グリッド)公益4.78%英米両国で事業を展開する電力・ガス企業
BP エネルギー4.42%世界有数の石油・ガス企業。コロナショックで50%減配も復配傾向。
SHEL(シェル)エネルギー4.21%世界有数の石油・ガス企業。コロナショックで66%減配も復配傾向。
NVS(ノバルティス)ヘルスケア4.19%世界有数の製薬企業。20年以上連続増配の記録を持ち、ADR銘柄として買付可能だが、源泉徴収税がネック。
GSK(グラクソ・スミス・クライン)ヘルスケア4.00%世界有数の製薬企業。2023年に配当削減。
UL(ユニリーバ)生活必需品3.58%世界有数の日用品メーカー。連続増配は22年に途切れる。
SNN(スミスアンドネフュー)ヘルスケア2.79%医療機器の製造や開発を手掛ける会社。過去3年配当は横ばい。
INFY(インフォシス)情報技術2.36%世界有数のITコンサルティング企業。少なくとも2000年以降減配なし。
DEO(ディアジオ)生活必需品2.15%世界有数の酒造メーカー。20年以上連続増配。
AZN(アストラゼネカ)ヘルスケア2.14%世界有数の製薬企業。配当は長らく横ばいも、22年に久しぶりに増配。
配当利回りは2023/3/25時点。現地通貨建てベースで配当を算出する企業は、原株式の配当利回りで計算。リンク先は銘柄分析に。

私はSHELBPNGGBTIULの5銘柄を保有しています✨

改めて調べてみると、高配当の銘柄は多いのですが、コロナショックを機に減配した企業や、増配を停止した企業も少なくないですね。米国企業と比べると、配当で株主に還元する意向が強いため、配当利回りは高い傾向にありますが、配当の持続可能性や信頼度という点では劣る印象です。



まとめ

ADR(米国預託証券)銘柄のなかでも、特にイギリス株は、源泉徴収税率がゼロであり、配当収入(インカムゲイン)を重視する投資家にとっても魅力的です✨

その一方で、イギリス株は高利回りの株も多いのですが、減配していたり、増配を停止していたりする企業も少なくなく、配当の持続可能性という点では懸念が残ります。

配当は5年間受け取ったけれど、株価が大きく下落してしまった💧」なんていうこともあるかもしれません。まだそれならいいですが、減配と株価下落のダブルパンチを食らってしまったら目も当てられません。

個人的には「源泉徴収税が取り戻せなかったとしても、結局のところ、米国株に投資するのがベストかな」という気もしていますが、リスクを鑑みたうえで、配当金を最大化するために、NISA枠をADR銘柄に使うという選択肢も一つには考えています✨

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