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ゆーたんです♪
「分散投資」シリーズ、今回はVer.2の部分に関する内容について書いてみますね♪
- Ver.1:資産クラスの分散(株式、債券、金、不動産etc…)
- Ver.2:地域の分散(米国株or世界株)
- Ver.3:セクターの分散(情報技術セクター[VGTなど]への投資 or S&P 500への投資)
- Ver.4:銘柄の分散(少数銘柄への集中投資or複数銘柄への分散投資)
- 番外:証券会社・証券口座の分散
以前、日本株と比較する形で米国株(アメリカ株)の優位性を示す記事を書きました。

このときは高配当株投資ということを前提に話を進めましたが、今回は、前回の記事を拡張する感じで、日本以外の先進国、新興国にスポットライトをあてて、考えてみますね。
トータルリターンの比較
2007年以降のリターンは米国株優位

アメリカ株式市場に投資するETFであるVTI、新興国株式市場に投資するETFであるVWO、先進国株式市場(除くアメリカ)に投資するVEAのトータルリターンを比較すると、VTIが圧倒していることが分かりますね。
上記のチャートは、VEAの設定日からの計測になっていますが、VWOは2005年3月に設定されています。こういったチャートなので、2005年以降のトータルリターンでも、VTIが圧倒している状況です。



もっとも、これは2007年7月以降のリターンで15年少々ですから、もう少し長期データが欲しいところです。期間を広げて見てみたいと思います。
1986年以降のリターンも米国株優位は変わらず
なかなか長期リターンは比較対象がなくて難しいのですが、株価指数を算出しているイギリス・FTSE社の下記サイトに、FTSEインデックスの設定来トータルリターンが掲載されています。

LAST(設定来)からYTD(年初来)データを除算すると、2022年末までのトータルリターンが分かります。
世界の株式市場に投資するFTSE All-Worldとアメリカの株式市場に投資するFTSE USAはいずれも設定来(基準日)が1986年末=100なので比較可能です(新興国は基準日が異なるため比較できませんでした)。
2022年末のLAST(概算)
FTSE All-World:679.973
FTSE USA:3480.996
この数値から年平均トータルリターンを計算すると、世界の株式市場は+5.5%、アメリカの株式市場は+10.4%となります。30年を超えるリターンでも、米国株優位は変わらないことがわかりますね。
人口動態の比較
国連の2022年版予測が出ているので、データを2019年版から差し替えています。
2019年版と比較すると、世界的に人口減少の予測が色濃くなっています。2085年頃には世界人口が104億人でピークを迎える予測となっており、23年に世界1位の人口となるインドも人口減少に転じる予測が立てられるようになりました。
アメリカも例外ではなく、人口の伸びは鈍化し、高齢化率は高まる予測となっています。しかし、相対的にみれば、アメリカが優位である点は変わらず、他国の人口減少傾向が鮮明になるなか、むしろその優位性は強まったとさえと考えます。以下詳述します。
アメリカの人口見通し

アメリカの総人口は2100年まで緩やかに増加していくことが見込まれています。ただ現状の予測ですと、4億人には届かない見込みです。14歳以下の人口は2045年をピーク、生産年齢人口(15~64歳)は2050年がピークと前倒しされていますが、国内の需要(内需)はそれまで増加することが見込めます。
先進国(アメリカを除く)の人口見通し

一方、アメリカを除く先進国の人口は2020年以降減少を続けていく見込みです。
2050年には2020年比で14歳以下の人口は17%減少、生産年齢人口は16%減少すると推計されています。人口が減るということは、内需が伸び悩む・減少していく可能性が高いです。
新興国の人口見通し

新興国については、人口も順調に増加していくので、内需が増えていくことが見込まれているのですが、14歳以下の人口は2050年にピークを迎え、生産年齢人口も75年にピークを迎えます。さらに90年以降は人口が減少に転じる見込みです。これは、いち早く少子高齢化を迎える中国の影響を強く受けているからです。
中国の人口見通し

新興国というと、今後も人口増加・経済成長が見込めそうなイメージがありますが、現状では新興国株式市場の国・地域別シェアは、中国と台湾だけで過半数を占めています。今後も人口増加が見込めるインドは15%程度に過ぎません(そのインドも今回の人口予測では2065年をピークに人口減少に転じる予測が立てられています)。
新興国株式市場を牽引する中国は、今後急速な少子高齢化・人口減少に直面することになります。2050年時点ではまだ13億人の人口を抱える大国ですが、高齢化率は30%にも達します。2100年の人口予測は8億人を切る水準まで減少見込みです。
中国は、ときに外資系企業を締め出し、巨大な内需を国内企業で独占することで、大きな収益をあげてきました。しかし、今後人口減少が進めば、その内需にも陰りがみられる可能性が出てくるといえるのではないでしょうか。
S&P 500構成企業は海外売上比率が4割強ある
S&P 500構成企業の海外売上比率はおおむね40%台で推移しています。最新のデータが見当たらず、少し古いデータにはなってしまいますが、2018年の割合は42.9%でした。
ちなみに世界の株式市場に投資するVTの国・地域別構成割合を見てみると、アメリカ株式市場が占める割合は約60%、残り40%がアメリカ以外です。ほぼS&P 500の海外売上比率と一致していますね。
もちろんアメリカ国内の政治・経済が混乱するなどの事情があれば、米国株の下げ幅が大きくなる可能性はあると思いますが、アメリカ以外の先進国株や新興国株も、GDP世界1位のアメリカ市場とかかわりがないということはありえず、結局のところ無傷ではいられないと思います。
地域の分散は「分散」にならない!?

上のチャートは直近1年のVTI、VEA、VWOの値動きを示したものです。リターンの差こそありますが、ほぼ同じ値動きをしていることが分かりますね。
ちなみに2007年末〜22年末までのVTIとVEAの相関係数は0.79、VEAとVWOの相関係数は0.78となっています。VTIとVWOはやや低かったものの、それでも0.453でした。
VTIとVEA、VEAとVWOには強い正の相関があるといってよく、VTIとVWOにも正の相関関係があります。ということは、地域の分散をしても、同じ株式クラスである以上(当たり前ですが)は、あまり「分散」にはならないということですね。
まとめ
【トータルリターン】
1986年以降で比較すると米国株>先進国株(アメリカ除く)。新興国株も2005年以降で比較すると米国株優位。
【人口動態】
アメリカは2100年まで人口が緩やかに増えていく。新興国の人口は増えていくが、株式市場で大きな割合を占める中国の人口減少がマイナス材料。アメリカ除く先進国は2020年以降人口減少が進む見通し。
【その他】
S&P 500構成企業の海外売上比率は4割強。成長する新興国市場を取り込むことは可能。米国株と先進国株(アメリカ除く)の相関は強く、新興国株との間にも正の相関があるので、地域別に分散しても、あまり「分散」にはならない。
経済成長率や株価の予測は困難ですが、人口動態は、変数が少なく、かなり精度の高い予測が可能です。
いくらグローバル化が進んでいて、外需(海外で生じる需要)を取り込むことができるといっても、それならやっぱり内需の大きい国に投資したいですよね。
もちろん投資家もそのことは認識していて、米国株はよく買われています。2023年2月末時点の米国株のPER(株価収益率)は19倍程度でが、アメリカを除く先進国株や新興国株は10~12倍台にとどまっているのがその証拠です。
短期的には、米国株に割高感もあるので、アメリカを除く先進国株や新興国株、世界株のリターンが米国株より高くなる局面もあるかもしれません。またドル安が進めば、アメリカを除く先進国株や新興国株、世界株のリターンも回復していくでしょう。
高配当株投資をしている私も、その観点から配当利回りの高いイギリス株やカナダ株などにいくつか投資しています。米国株100%というわけではありません。それでも、株式クラスのなかでは米国株が8割と、米国株に手厚く配分しています。
さまざまな考え方があることは十分承知していますが、20~30年、あるいはそれ以上という長期スパンで見れば、「米国株だけでも十分じゃないかな?」というのが私の考えです✨